第24話:Game(=Lovers…).22





 そして、いつも通りだがふたりはもう恋人同士なんだよ、という、帰り道にて。

 ドキドキ
 ナナは、彼氏と彼女という間柄が加わったこともあり、まぁこちらもいつも通りだが、ドキドキしていた。
 そんでもってやっぱりいつも通り、薔は堂々と歩いていた。



 「なぁ、ナナ、」
 「はいぃ…………?」

 突然、会話は始まった。
 こちらもいつも通りかな?


 「おまえ、浴衣は持ってんのか?」
 「え?」
 目をぱちくりさせる、ナナ。

 「こないだ着ましたけど、」
 「あんなんじゃねーよ、もっとかわいいやつだ。」

 …………………はい?


 「もし持ってんなら、今夜着てこい。いいな?」
 「は、はぁ…………」

 意味がよくわからなかったが、とにかくふたりは歩いてゆきましたとさ。








 「ただいま。」
 門ではこの日はなにもなかったため、ナナは普通に家に入った。
 「おかえり、ナナ。」
 そしてこの日も母は演歌を聴いておらず、プリッツを食べながら上がり口に立っていた。

 「びっくりしたぁ………!お母さん、最近、驚かせすぎだよぉ!」
 「お母さんのは、大したことないわよ。」

 …………………はい?

 「ところで、ナナ。」
 「なに?」
 プリッツを食べながら、背高き母は言いました。


 「お母さん、虫だか本能だかが知らせたから、さっきあなたに浴衣を買ってきてあげたわよ。」



 「ぇぇぇぇえ!?」
 ナナはのけぞった。

 「大丈夫よ、ちゃんと着付けの本も買ってきたから。あとで着付けてあげるから。」
 「えーっ!?お母さんて、スゴイね!ノストラダムスの後継ぎは、お母さんがいいかもしれない!」
 ナナはやたら、感心した。



 「ほめ言葉だか、微妙だけど、とりあえずシャワー浴びてらっしゃい。そのあとに、着付けてあげるから。」
 プリッツをかじったまま、母は奥へと歩いていった。



 ということでナナはまず、シャワーを浴びました。




 母は手本を見ただけで、見事なまでに浴衣を着付けた。
 そして母はセンスがよく、浴衣は紺色に、白と所々ほんのりうすいピンクが混じった花柄で、帯は水色だった。

 ちなみに下着はちゃんとつけました。うえは和装ブラで。


 髪も、アップにしました。





 18時30分頃に、父が帰宅した。
 父はナナを見て、かなり驚いており。
 「うわぁ!ナナぁ!?」
 やたら、はしゃいでいた。

 「どうしたんだい?その格好だと、今日もお出かけだよね?え?帰ってはこれるの?」
 はしゃいだあと、質問タイムに突入した父は、

 「雅之、」
 母に呼び止められた。

 「ハニー!いやぁ、ナナはなんだか大人びちゃって、困っちゃうね!」
 見上げた夫に向かって、ひとこと。


 「それ以上の野暮は、冷やし中華を封印するわよ?」


 「ぇぇぇぇえ!?」
 父は青ざめた。

 「それは困るよ!」
 「なら、はやく食べるわよ?冷やし中華。」
 「はい!」

 父の背中を押してキッチンへ連れて行く母は、

 振り向いて、


 「今夜もお泊まりなら、気合い入れてくのよ?」


 と、微笑んだ。



 「なに言ってんの―――――――――っ!?」
 父は叫んだが、母は押しやって歩いていった。


 ナナはポカンと赤くなっていたが、気づくと18時50分だった。

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