第24話:Game(=Lovers…).22





 ときおなじくして。

 ギャラリーだかはいつも通り完全無視の薔は、席にふんぞり返っていた。


 そこへ、とあるオトコが声をかけた。


 「あの、薔さま……………」
 「あ?」


 視線をおくると、入り口に、真っ赤で恥じらうちっさい童貞オトコ・ベンジャミンがもじもじしながら立っていた。



 「どこのどいつだ?」
 「ぇぇえ!?」
 そしておもてにはまったくもって出してはいないが、薔もうかれているので、昨夜襲われかけたベンジャミンのことですら軽く忘れていた。


 「僕です!ベンジャミンです!」
 「そーいや、いたな。」

 なんとなく、思い出した。あまり覚えてはいなかったが。
 やたらかしこまるベンジャミンに向かって、堂々と薔は言い放つ。




 「正真正銘俺のナナに、なんか用か?」




 「はい……………?」
 目をぱちくりのベンジャミンに向かって、薔はつづけた。



 「場合によらずともキサマ、ブッた切るぞ?切るほど無えが。」



 ぇぇぇぇぇぇぇえ!?



 「わぁ!嬉しいお言葉を、ありがとうございます!」
 「いーから、はやく失せろ。」

 えぇえっ!?


 「ちがうんです!あの、」
 「なんだ?」



 ベンジャミンは、恥じらいながら手のゆびを合わせた。
 「す、すすす、す…………」
 「…………………、」

 黙って、いたって無感情な瞳の、薔。


 「すみません!言えません!」


 そろそろ殴ってやろうかと思っていたギャラリーを振り切って、ベンジャミンは女の子走りをしながら去っていった。




 「ド気色悪りぃモン、見ちまったな。」
 ものすごく低い声で、薔はまえを向いて言った。


 「いまだから許してやったが、つぎは無えヤツ切断だな。」




 ……ベンジャミンよ、あんたもう本当に、つぎはないかもしれないよ?










 教室にベンジャミンがいなかったことに憤慨しながら、ナナが廊下を歩いていると。


 「あれ……………?」
 目のまえに、目を疑いたくなるほどの女の子走りで、ベンジャミンがやって来た。

 「うわぁ………!どうしよう?見なかったことにしたい!」
 ナナがドン引いていると、

 「あ!オドレイ!」
 見たくもないのに目がキラキラのベンジャミンは、ナナに駆け寄った。

 「来るなーっ!」
 ただただ引いてるナナ。
 に向かって、
 「あ、僕もう、君には手を出さないから!」
 ベンジャミンは明るく言った。


 「え?本当に?」
 コイツもようやく、わかったのか?と思ったナナに、ベンジャミンはひとこと。


 「その代わり、もう君と僕は、ライバルなんだよ!?」


 「はい……………?」
 ナナは眉間にシワをすこし寄せたが、

 「よろしくね!」
 ベンジャミンは再び、女の子走りで去っていった。





 「あの〜、ベンジャミン。一回なら近寄ってもいいから、頼むから殴らせてもらえるかな?」
 ナナは呆れて呟いた。




 いやしかし、ベンジャミンは、ライバルには足の裏の下にすら及ばないことを、知る由もない。
 ていうか、思い知ってもいない。

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