第24話:Game(=Lovers…).22






 朝です!
 恋しちゃってから朝が、恋人になっちゃってから朝へとうつりかわりました!
 なんとまぁ、清々しいというよりは、あったかい朝でしょうかね?



 「ん…………?」
 ナナがゆっくり目を開けると、抱きあう体勢のまま、薔はまだ眠っていた。


 (わぁあ………!こんなにスゴイひとが彼氏だなんて、まだなんか実感がわかないよ!)
 ほおを赤らめるナナだが、

 「……………………、」

 しばし黙ったあと、ずっと薔のあたまをやさしく撫でていた。




 「ん…………………」
 やがて目を覚ました薔に、
 「お、おはようございます…………!」
 彼氏になっても、かしこまり挨拶をすると、
 「おはよう。」
 と微笑んで、薔はつよくナナに抱きついた。


 ナナは、想った。

 (このうえなくしあわせで、ありがたすぎるんですけど、心臓はもう、もたないくらいであります!)






 んでもって、いつも通り、登校していった。


 なんだかギャラリーもあまり気にならなくなっていたが、まぁ、このふたりは恋人同士になるまえから、やたら恋愛チックなことを、していたんだよね。








 お昼休みの出来事。

 ナナは、ベンジャミンに再び厳しく忠告をしようと(ついでにぶん殴ろうと)、ヤツの教室へ向かっていた。

 ちなみにベンジャミンは、3年生だった。
 ここまでのお話の流れで、あのちっさオトコが3年生にふさわしいとは、到底思えなかった。いくつであろうと。


 (ベンジャミンのやつ!ほんっとうにオトコとして、最低のサイテーだわ!)
 憤り、廊下をズンズン歩いていると、

 「やぁ、三咲 ナナさん。」

 とある人物に、声をかけられた。



 だれ?と思って顔を向けると、

 「元気だったかな?」

 かの有名な、林夏川 広志が立っていた。
 夏風邪が長引いた広志はずっと欠席をしており、本日は久しぶりに登校してきたのだ。


 「だれだっけ?」
 「ぇえ!?」
 そしてうかれすぎているナナは、あれほど腹を立てていた広志のことですら、軽く忘れていた。

 「ボクだよ!林夏川 広志だよ!」
 「あ、なんとなく、思い出してきちゃった。」

 やたら低反応のナナに向かって、広志は告げた。


 「ねぇ、ナナさん、久しぶりに会えたから言うよ。ボクと付き合ってくれるかい?」



 かあぁぁぁあぁっ!



 するとナナは、一瞬で真っ赤になった。


 (やっぱり、脈大アリだね。)
 フフンとした広志に向かって、


 「わ、わたし…………、」


 恥じらうナナは、けっこう叫んだ。




 「はてしなくスゴイ彼氏がいるんで、どうやっても無理です!」




 「ぇえ………?」
 ポカンとする広志。

 のまわりがすかさず、


 「ぇぇえ!?三咲さん!彼氏って、どなた!?はてしなくスゴイって、どなた!?わかるけど、お名前うかがいたいよ!?」

 真っ赤になって問いつめた。


 よって、さらに真っ赤になったナナは、走り去ってしまい。





 広志は、呟く。
 「ま、まさか………………、」



 そのまさか、だよ。



 しかし広志は何気に、ナナと薔が恋人同士になった初日に、ナナに薔のことをはじめて“彼氏”と呼ばす機会(おのれの告白だったが)をつくった。
 広志も、やるときゃやるオトコかもしれない。
 かもだけど。

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