※第23話:Game(&Confession).21





「いえ!牙では消せません!舐めたら消せます!」
 言い聞かせようとするナナへ、くるしげに薔は言う。

「おまえのつけた傷痕じゃねーと、嫌なんだよ。」

「そんなぁ………、」
 ナナはせつなくなるが、

「安心しろ。俺はおまえになら、なにをされても構わねぇ。」
 薔はゆびを、彼女のほおにそっとすべらせた。


「舐めて消すのは、噛んで消したあとだ。おまえ以外の牙は、おまえが消し去ってくれ。」
 その瞳が、あまりにもうるんでいたため、

「わかり……ました……………………」
 泣きたいのを必死でこらえ、ナナはベッドに乗った。




 ゆっくりと、薔にまたがると、
「キスはあとだ。はやく消せ。」
 ほおに手を添えて囁く彼と、もつれるように倒れ込んでいった。




 ナナは、指輪をはずす。

 そして牙を最大限に立てて、傷口のうえに噛みついた。

「……っ!」
 押し上げてくる声を、薔は押し殺して瞳を閉じる。

 血は流れ落ちてゆく。

 深々と噛みついたナナは、あふれ出る血液を飲み込んでいった。



「んっ………ん……………んん……………」
 ナナは血液の効果で、イきそうになっていた。
 そして薔はただかすかに呼吸をするだけで、ずっとやさしく、ナナのあたまを撫でていた。


 やがて、ナナの傷痕が確かになってから、その傷が癒えて消えるように、彼女は舐めだした。
 そのあいだもずっと、薔は変わらずにいた。




「ん――――――…っ!」
 何回か達して、ナナのからだが麻痺してきたころ、よくよく見ると傷痕は、キレイに消え去っていた。





「キレイに、消えました…………!」
 ナナは安心して、振り絞るように告げる。

 すると、

「そう…か…………」
 深い息とともに、薔は瞳を開いた。

「なぁ……ナナ……………」
 開かれた瞳はうるんでおり、そのなかにはただ、ナナだけが映っている。

「悪りぃな……いまは………起き上がれ……ねぇ……………」
 途切れ途切れだが、言葉はつよく紡がれてゆく。


「だから………いまは……………おまえ…が………俺を…抱いてくれ………………」
「え―――――…?」
 ナナは、すこしだけ、からだを起こした。

 そして、あたまを撫でていた手をほおに添えて、





「いま………だけでも……いい………おまえに………………抱かれたい………………」

 瞳を細めて、薔は囁いた。

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