※第23話:Game(&Confession).21





 走った。
 ただひたすらに、まっすぐ、愛するひとに向かって走った。




 たどり着いた薔のマンションでエレベーターのボタンを押したが、降りてくるまでには時間がかかりそうだった。

「こうなったら、階段だよ!」
 ナナは全力疾走で、階段を駆け上がっていった。






 合い鍵でドアを開けると、なかはシンとしており。

 しかし花子がまるで、

 こっちだよ

 とでも言うかのごとく、尻尾を振ってナナを出迎えてくれた。

「おぉお!花子ちゃん、ありがとう!」
 この時点で、ナナは指輪をはめた。


 そして花子に案内されて、薔の寝室へと向かった。




 ガチャ―――――…

 花子は案内を終えて、リビングへと戻っていった。
 ひとりで寝室へ入ると、

「あぁ、ナナ、」

 月明かりだけの静かな部屋のなか、薔はベッドのうえに座っていた。


「はやかったな。」
「い、いえ、お待たせしてすみません………、」

 ナナは、かしこまるが、

「来いよ。」


 ゆっくりと、ベッドに近づいていった。





 パッ―――――…

 近づいたナナにセンサーが反応したのか、ベッドサイドに明かりが灯る。


 そのときナナは、息をのんだ。




 薔の首もとはあかく染まり、痛々しい傷痕がついていたからだ。



「どうなさったんですかぁ!?」
 青ざめたナナはかがんで、傷口を覗き込む。
「大したことねーよ。」
 薔はそう言ったが、ナナはさとった。
 どう見ても、噛まれた痕だった。ベンジャミンとしか、考えようがない。


 ポタッ
 ナナの目から、涙がこぼれ落ちる。

「ご、ごめんなさい………………わたしが、余計なことを………………」
「おい、」
 ポロポロと涙を流すナナに向かって、薔は言い聞かせた。



「ほんとに余計なことなら、おまえは泣かねーだろ?」



「で、でも………あまりにも、痛そうで………………、」
 言いかけたナナを、つよく抱きしめて。

「まったく痛くねぇよ。」
 耳もとで、ちからづよく囁いた。

「俺がほんとに痛てぇのはただ、おまえが傷つくことだ。わかったか?」

「え――――――…?」
 泣きやんだ、ナナの耳もと、囁きはつづく。


「それに、ヤるまえに泣かれたら、俺が困るだろ?」




「ぇえ!?」
 驚きナナが顔をあげると、
 「ナナ、」
 ひどく近くで、薔は言った。





「消してくれ。おまえの牙で。」

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