第22話:Game(+Key).20






 しかし、激しく撫でられるのはおあずけになったのか、やたら平和に授業は進んでいった。


 そして、平和な授業は通り越して、やはり平和な、放課後。




「ナナちゃぁん。」
 部活へ行くまえのこけしちゃんが、ニコニコとナナに声をかけてきた。
「なにかな?こけしちゃん!」
 ナナもこけしちゃんほどではないが、ニコニコと返事をする。
「あのねぇ、ナナちゃぁんが薔くぅんと手をつないで帰るまえにぃ、渡したいものがあるのぉ。」
「おぉお!なにかな!?」
 ナナは、渡したいものには食いついたが、帰り道の事実は当たり前のように流した。

「イラストだよぉ。」
 そしてにっこりとこけしちゃんは、大きなファイルを手渡す。
「すごっ!大きいね!ありがとう!本当に、ありがとう!帰って、神棚に飾るよ!」
「親友だもぉんぅ。そんなに、かしこまらないでぇぇ?」
 こけしちゃんは、ナナのまえでははじめて、彼女を親友と呼んだ。

「こけしちゃーん!かわいすぎるってーっ!」
「うぅんぅ。ナナちゃぁんだって、いつもじゅぅぅぶんに、かわいいよぉ?」
 感動的な会話をしていたが、
「見てもいいかな!?」
「もちろんぅ。」
 ナナがおもむろにファイルからイラストを取り出すと、

 めちゃくちゃ美形で、眼鏡をかけた男性が、ナナを誘うように見ていた。


「うぅぅぅぅぅぅうまぁぁぁぁぁぁぁあ!こちらは、どなた!?」
「ゴルゴンゾーラだよぉぉ。」

 ……………ごるご?

「ぉお!それはまさしくチーズだけど、このかたはまったく、チーズじゃないね!」
「そぉぉなのぉ。まさしくぅ、ギャップ萌えなのぉ。」

 ………………ぎゃっ?

「ぎゃ、“ぎゃっぷもえ”って、なに?」
「ナナちゃぁんは、けっこういつも、目の当たりにできてるよぉ?」

 そうなんだぁ!
 気づかなかったぁ!

「いや、しかし、かっこいいおかただね!ゴルゴンゾーラさん!」
「ナナちゃぁんのSな美形には、完敗だけどぉぉ。」

 ………………………はい?

「でもねぇ、ゴルゴンゾーラもなかなかやるからぁ、よかったらチェックしてみてぇ?木曜日の18時からぁ、日テレだからぁ。」
「わかったよ!こけしちゃん!“にってれ”ってのはよくわからないけど、辞書ひいてみるよ!」
 ナナは片手でゴルゴンゾーラを持ち、もう片方でこけしちゃんの手を握りしめた。

「ありがとぉ。じゃぁあ、あたし、部活に繰り出してくるねぇ。」
「うん!」
 ナナはちょっとつよく握ってから、こけしちゃんのちいさな手を離したが、やっぱりこころは近づいており。


「じゃぁあねぇ。」
 こけしちゃんはニコニコ顔で手を振って、ゆったりと廊下を歩いていった。

[ 236/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る