第20話:Game(+Kidnapping).18





「それにしても、なんだか立派な靴だねぇ。」
「うん。」
「あんなとこにあったなんて、もったいないよね。」
 はしゃぎながら歩き、正面玄関にさしかかった3人の女子生徒は、



「おい、」



 突然声をかけられた。





 ……………………はい?


 はっとして、3人で顔を向けると、


「その靴、どこにあったんだ?」




 目のまえに、ふたつの鞄とおそらく自身の靴を持った薔が立っていた。




 …………………ぎゃあ!

「ぎゃぁぁぁぁぁあっ!!しょ、薔さま!?」

 女の子たちは、真っ赤でのけぞる。

「いーから、どこだ?」
 見下ろされ、

「あああああの、裏口に落ちておりました!」
 拾い上げた子が、真っ赤になって報告した。

「これから、職員室に届けるところです!」
 最初はためらった子が、やはり真っ赤で述べた。


 すると、

「そうか。」

 クイ――…

 その靴を薔は、やさしく奪いとった。




「よくやったな、これは俺のだ。」




 言葉を響かせ、彼は裏口へと走っていった。





 女子生徒たちは、3人してへたり込む。

「おぉお!やっぱり、真心って大事だね!」
「うんうん!」
 靴への真摯な態度が、彼女たちにエロス(え?)をもたらした。

「てか、かっこよすぎてもう、ちから入らないよ!」
「どうしよう?」
「部活に、行けないよ!」




「でも、お声かけてもらえたし、きっと行けたらスマッシュ打てるよ!」

 3人は、卓球部だった。








 裏口を出た薔は、


「あぁ、あそこか。」


 斜めまえに見える、裏山を見据えた。

 この学校には、ロマンチックなのかちゃんとした裏山がついていた。



「待ってろ。」



 まるで、風を切り裂くかのように、薔は走りだした。

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