第20話:Game(+Kidnapping).18





 ナナはベンジャミンと、だれもいない裏口にいた。

「ちょっと、あのひと、どこにいるの?」
 正面玄関から持ってきた靴を履いたナナが、キョロキョロしていると、

「オドレイ、」

 目のまえで、ベンジャミンは振り向く。




「もう会えないよ、あの男には。」




 不気味な笑いは、言葉でナナを貫いた。




「え―――――――…?」

 凍りつく、ナナ。


 は、


 グイッ


 突然、ふたりの男に抱え上げられた。


「きゃあっ!」
 叫んだナナは、

 ポトッ―――…

 思い入れのありすぎる靴を、片方落とした。


「あぁっ…………!」
 必死に手を伸ばすが、届かずつかむは宙ばかり。


「行こうか。」
 ベンジャミンは歩きだす。


「やだぁぁあ!」
 ナナは抱える男の背中を、叩きつづけた。
 しかし彼女は、決して泣きはしなかった。








 その頃、

 ガラッ――――――…!

 びくびくぅ…………!
 勢いよく教室のドアを開けた薔に、残っていたクラスメートたちはのけぞって驚いた。

 彼は堂々と入ってきたが、

「おい、」

 誰を、でもなく問いつめた。



「ナナはどこだ?」




「あ、あの…………、」
「なんだ?」

 ひとりのクラスメートが、恐る恐る口を開く。

「先ほど……金髪の転校生と…帰っていきました……………」
「鞄あんじゃねーか。」

 …………………え?


「なんでオマエらは、そん時あのクソ童貞を、ぶん殴らなかったんだ?」

 …………………ぇぇぇえ!?


 あたふたする、クラスメートのまえ、


「あー、それは責任転嫁か。」



 と呟いた薔は、ナナの鞄と自身の鞄をつかんで教室を走り去った。




「な、何事、ですか…………?」

 クラスメートたちは、なんだか嫌な予感がしていた。







 裏口にて。

 そこを通り部活に行こうとした、3人の女子生徒は、

「あれ?」

 片方だけ落ちた、靴を発見した。


「どうしたんだろう?」
 ひとりの子が、拾い上げる。

「ねぇ、いまイジメ問題とか多いから、ほっといたほうがいいよ。」
 という意見も出たが、
「ぇえ!?なに言ってんの!?なら、職員室に届けなきゃダメじゃん!」
 拾い上げた子がつよく言ったので、
「そ、それもそうだね。」
「そうだよ。」
「うんうん。」

 3人は部活を後回しにして、片方だけの靴を職員室に届けることにした。

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