第20話:Game(+Kidnapping).18






 ナナが、ベンジャミンについてゆく頃。

 フワ――――――…

 校門を、ひとりの“共犯者”が通り抜けた。

 その女性は、まるでフランス人形のようで、かなりの美人だった。
 明らかに、ゴスロリだった。



「ちょっ、あの女の子、かなりの美人だけど、すごいカッコだよ?学校で。」
「うん、」

 まわりの生徒たちは、ひそひそと話していた。




「ベンジャミンのやつ、“ものすごく美形だけど生意気そうな男”を誘惑してって言ってきたけど、そんなひと見ただけでわかるのかなぁ?」
 フランス人形もどきは、そうブツブツと言っていた。


 そんな彼女のまえで、

 ザッ――――――…

 ものすごく美形だけど生意気そうなひとが、渡り廊下を堂々と歩いていった。


「あ、わかったわ。」




 呟いたフランス人形もどきは、彼に駆け寄った。




「ねぇ、キミ!」
「あ?」

 薔が振り向く。



「ちょっとアタシと、楽しいコトしなぁい?」

 フランス人形もどきは、体をくねらせ甘い声で誘った。



「…………………、」
 薔は無言で見下ろしていたが、



「おそろしく萎えるな。」



 低すぎる声で言い、背を向け歩きだした。




「ぇぇぇぇぇぇえ!?」
 ルックスに自信のあるフランス人形もどきは、心底仰天した。


 んでもって、薔のまえに回り込んだ。
「ちょっと!こんな美人が誘ってるのにそれはな」
「おい、」


 ………………はい?


「だれが目のまえに立ってもいいと言った?この気狂い不審者が。」

 ……………ぇぇぇえ!?


「いや、あの、ちょっとお時間を」
「オマエにやれるムダな時間は、このあとおよそ3秒だ。」

 …………………え?



 唖然とするフランス人形もどきだが、
「どけ。」
 と言って、薔は堂々と歩き去った。
 本当に、3秒ほどしか彼は、とどまらなかった。


 このとき、ずっと見上げてしまっていたもどきは(略してごめん)、なんだかものすごくときめいた。

「あのひとスゴイ!人間?」
 目を輝かせるもどきは、およそ人間ではない噂のことなど知る由もない。

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