第20話:Game(+Kidnapping).18





 だが、平和そうに見えるこの日、とある邪悪な計画が、あるオトコの手によって立てられていた。
 見た目には穏やかな時間に、真の魔の手はしのびよる。





 火曜日の最終授業は、体育だ。
 この日の体育は、運が悪いにもほどがあることに、男女別々だった。

 男子は体育館を使ったが、女子は水泳だった。
 ちなみにナナは、カナヅチだった。


 まったく泳げない彼女は、それでも懸命に水をかいた。
 そうこうしていると、男子よりけっこう早い時間に、水泳の授業は終えた。




 更衣室で着替え終わった女子たちは、それぞれが教室へと戻る。

 ナナは、こけしちゃんと戻った。
 こけしちゃんは教室に着くなり、漫研で締切間近の作品があるということで、はやめの部活へと繰り出していった。




 こけしちゃんを、手を振り見送っていたナナは、




「オドレイ、」




 うしろからベンジャミンに、声をかけられた。






「ぎゃあ!なにしにきたの!もう、あんたのことはすっかり忘れてたよ!」
 嫌な思いに、ナナはそれとなくきついことを言った。

 するとベンジャミンは、

「昨日はごめんね。」

 珍しく謝った。



「えぇ?」
 予想外の謝罪に、ナナは耳を疑う。
 そんな彼女に、ベンジャミンはつづけた。


「僕、すごい反省したから、君の男にも謝ったんだよ。」


 と。


「え?本当に?」
 ナナは目をぱちくりさせたあと、
「ぎゃあ!いまあんた、さりげなく恥ずかしいこと言ったよ!普通に会話流しちゃったよ!」
 赤面した。


 そしてベンジャミンは、

「でね、いまあのひと、君を交えて三人で話がしたいって言ってるから、ついてきてくれるかな?」

 と、笑って言った。


「え?そうなの?」
「うん。あのひと、意外と優しいんだね。」
 ベンジャミンがこう言ったので、ナナはなんとなく納得してしまった。

 (でもちょっとそれって、優しい、のかな?)
 そう思いもしたが、ナナは大人しく、ベンジャミンのあとをついていった。

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