※第17話:Game(in Hotel).15





「はぁ……っ、あ……………」
 もはや壁にもたれてぐったりしている薔の左胸を吸うのをやめ、ナナが舐めようとしている時だった。


「暮中さま、少々よろしいでしょうか?」
 襖の前で、女将の声がしたのだ。


 ギョッとしたナナは、薔から離れる。
 (え?なに?)
 慌てふためいたが、

「お伺いしたいことがございますので、開けていただけますでしょうか?」
 などと、言われてしまった。

「どうしよう…………?」
 困り果てる、ナナ。


 薔を見ると、

「ん…………………」

 彼はひどく、ぐったりしている。



 こんなときにこのひとを出ていかせるわけにはいかないと、こころを決めたナナは、勇気をだして立ち上がり扉へと歩いていった。
 歩く途中で、傍らに置いてあった手拭いを手にとり、それでくちびるを拭くと首にかけていた。





 開けると、女将が立っていた。
「あのぅ…………、」
 恐る恐る口を開くナナに、
「お隣のお客様が、こちらのお部屋からちょっとしたお声が聞こえるということなのですが、特になにも、ございませんよね?」
 女将は笑顔で、問いつめる。
 (えぇえ!?あのバカそうなカップル、余計なことを!)
 腹が立ったナナは、
「なにもないです。」
 きっぱりと言いきった。

 すると、
「ウソをつけ!」
 女将のうしろから、ゆきりんとミッチーが顔を出した。
 (げぇっ!?)
 青ざめる、ナナ。
「お客様……、」
 制止しようとする女将をくぐり抜け、(バ)カップルはナナに迫った。

「たしかに、めちゃくちゃエロい声聞こえたもん!」
「なにをしてるんだ!?」
 ずいずいと迫りくる彼らから後ずさったナナは、




「どーした?」




 薔に肩を抱かれた。




 はっとして見上げると、きちんと浴衣を着た薔は、平然として堂々と隣に立っていた。

 (なんか、スゴイひと出てきたよ―――――――――っ!)
 今度は(バ)カップルが、後ずさる。かなり。

「あの、こちらのお部屋で、おとなりのお客様がスゴイお声がすると、おっしゃるのですが………、」
 女将がほおを赤く染めて申し立てると、


「あぁ、アレは動画だ。」

 と、薔は言った。


 ……………え?
 動画?


 薔以外のみんなが、唖然とする。


「こいつはドスケベだからな。エロい動画がねぇと、夜はおかしくなるんだ。」

 ……………ぇぇぇぇぇえっ!?

「ソレ、YouTubeでも見れますか!?」
 食いつく女将のうしろに身をひそめたゆきりんとミッチーは、



 (ていうか、さっきのあのエロい声だしてたの、明らかにこのひとだよ!)



 そう、こころで叫んでいた。
 でも言えなかった。
 言えるようなひとでは、到底なかった。


 適当に教えられたYouTubeの動画タイトルに満足した女将は、

「では、失礼いたしました。どうぞ、ごゆるりと。」
 微笑んであたまをさげ、(バ)カップルを連れて去っていった。

 ゆきりんとミッチーは、真っ赤になりなんだか怯えていた。

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