※第13話:Game(in Sofa).11




「はぁっ…………はぁっ………………」
 すごく甘い香りにつつまれ、落ち着くための息を何度も吐いていると、

「ナナ、」

 抱きしめたまま、薔にそっと名前を呼ばれた。


「はい…………?」
 ナナはゆっくりと顔を上げる。


 その髪を撫で、質問は投げかけられた。




「お前の噛み痕がすぐ消えるのは、なぜだ?」




「え?えーと…………、」
 ナナはあたまをめぐらす。
 (そういえば、聞いたことはあるんだよね………。)

 うーん………………、


 あ!
 思い出した!


「たしか、傷痕を舐めることによって、治りがものすごくはやくなったり、完全に消えちゃうんだというお話を聞いたことがあります!ちなみにこちら、能力とは違って体質なので、指輪でも抑えられないんです!そうなんです!」
「ふーん、」


 ナナはいつもによって、素直すぎた。


「やはりな、」
 そう呟いた薔は、ナナの顎を持ち上げ、言った。






「ならお前、昨日の噛み痕消せよ。」






 なんでわたしは、正直にも言ってしまったんだろう?と、赤面しながらも後悔するナナ。

「いや、あの、それはその…………」
「フツーなら、消してあげたいと思うよな?」

 うぐっ………………!

「でも、場所が場所なんで……………」
「そこにお前はもう、二度も噛みついたが?」


 ぎゃぁぁあっ………!


 言葉に詰まるナナの顎から手を離した薔は、落とした彼女の手にゆびを絡め、そっと肩にあたまを乗せた。



 (あれ……………?)
 意外な行動に、どぎまぎするナナ。
 そのままの体勢で、薔は囁いた。





「お前の舌で、消してほしい。」





 心臓がくるしくなる。
「ダメか?」
 相変わらずの体勢だったが、ナナがそれを崩した。

 絡めたゆびを片方だけほどき、顔をあげた薔の頬へと両手をそえる。




 見つめあう、ふたり。






「消します………、アナタさまの傷なら、すべて…………………」

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