※第13話:Game(in Sofa).11




 そのまま一緒に寝室を出ると、無言のままリビングまで歩いた。


 リビングでは、花子が尻尾を振っていた。
 そして花子は姿を見るなり、大好きなご主人さまへと歩み寄ってきた。


「おはよう。」
 花子のあたまを、やさしく撫でる薔。
 ナナはそのしぐさに、心底ときめいてしまった。



「花子と待ってろ。」
 そう言い残すと、薔はキッチンへと入っていった。


 ぽつん

 ナナはリビングのソファに、ちょこんとして座っていた。
「は、花子ちゃんと、待つとおっしゃっても……………」
 ドキドキしながらチラリと花子を見ると、彼女はナナを見つめながら尻尾を振りつづけている。


「え?花子ちゃん、わたしにもお尻尾を振ってくださるの?」
 驚きのあまり、大感激のナナ。

「は、花子ちゃんっ……………!」
 目をうるうるさせ、花子に抱きついた。

 花子はあったかい。
 そしてフサフサで、いい匂いがする。


「おぉお…………!なんだかすごく気持ちいいよ!」
 ナナはこの朝、花子と打ち解けた。


 そして対面式キッチンなので、なにげにこの光景は薔から丸見えなのであった。





「なにしてんだ?お前は、」
 花子に抱きついたまま、心地よさに眠りかけていると、頭上で薔の声がした。


 ……………………はっ!!

 とっさに、我に返る。


「すすすすスミマセン…………!花子ちゃんが、あまりにもかわいかったので、つい………………!」
「まぁ、それは仕方ねーな。」

 よかった……………!
 怒られなかったし、とくにエッチなコトも言われなかったし、で、安堵するナナ。



「来いよ。」


 促され、キッチンへと入っていった。





 テーブルのうえには、かなり豪華な朝食が並んでいた。
 短時間で作ったにしては、手が込んでいる。

「すごぉ!え?こちらすべて、お作りになったんですか!?」
「当たり前だ。」

 ナナは、最近は朝食を摂るようにしているが、いつもウイダーインゼリーをみっつ、とかであった。




 しかし、食事は、明らかに片方のがボリュームがあった。
「こちら、多いですね?」
「それはお前のだ。」

 ………………ぇぇえ!?

「なぜにですかぁ!?フツーは逆なんじゃないですかぁ!?」

 驚き叫ぶナナ。

「朝はあんま入んねーんだ。」

 静かにそう答えると、薔は席についた。



 ナナもゆっくり席につくと、厳粛に“いただきます”をしてから食べはじめた。





「なんか、麻痺していた味覚だかが、戻ってきましたよ!めちゃくちゃ美味しいですよ、ぜんぶ!」
 ナナは、はしゃいでいた。
 そしてまったく料理ができないナナは、この出来栄えにいたく感動していた。


「お前は、やたら美味そうに食うな?」
 目の前でそう言う薔は、ほとんど食事には手をつけず、コーヒー(※ブラック)を飲んでいた。


「あのぅ、薔さん………、」
「なんだ?」

 またしてもふんぞり返ってる彼に、ナナは恐る恐る提案した。

「けっこう血液失ったんで、お食事なさってくださいよぉ………、本当に…………」


 と。



「ならお前を食わせろ。」

 しかし返ってきたセリフは、こうだった。


「ぇぇぇぇえっ………!?あの、わたしもんのすごーく心配しているんで、いまはそういうエッチなコトは、言わないでくださいっ!」
 ナナはあたふたと言い返す。



「ふーん、」

 なんだか納得したんだかなんだかはわからないが、薔は少しずつ食事に手をつけていった。





 そんなこんなんで、無事に食事をおえた。

「ごちそうさまでした!」
 ナナは手をあわせる。

「本当に美味しかったです!ありがとうございます!」
 そして薔にも手をあわせた。

「あぁ。」
 彼はゆっくりと立ち上がる。

「どうなされました?」
 キョトンとするナナは、
「片付けだ。」
 と言われ、
 (ぁぁあっ…………!)
 すっかり忘れていた後片付けのことを思い出し、
「あ、あの、お片付けくらい、わたしがやります!」
 と、申したてたのであった。





「割んなよ?俺はシャワー浴びてくる。」
 そう言い残すと、薔はキッチンを出ていった。



 ザァア―――――…
 ナナにでも、お皿洗いはできた。
 さいわいなことに、一枚もまだ割っていない。



 キュッ
 そしてすべての皿を洗いおえ、テーブルなどをこまめに拭き、真っ白なふきんで皿も拭いて、やたらクラシカルな食器棚に仕舞ったのであった。

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