※第13話:Game(in Sofa).11




「え?いや、あの…………」
 ナナはとっさに、どう言い訳をしようかと真剣に悩んだ。
 明らかに、ここで泣いていたら不自然だよ!
 またこのひとに、おそろしいことをさせるようなおもいはさせたくないよ!?



 そんな悩みをかかえあたふたするナナのまえで、気づくと薔はベッドをおりていた。

 (あ、あれ?)
 ナナはうつむいていたが、彼はしゃがむと、覗き込むようにして言った。




「どーした?怖い夢でも見たか?」




 その言い方が、いつも通りのトーンにおいて、なんだかとてもやさしかったのだ。


「もう大丈夫だぞ?」


 そして薔は、ゆびで、ナナの涙を拭った。




 ナナは、かなり真っ赤でぼーっとしていた。
 ひどく深い想いを抱いたまま、こころは放心状態だった。


 そんな、けっこうロマンチックな雰囲気のなか、

 グゥ

 ナナのお腹の音が、ロマンチックを突き破った。



「腹減ってんのか?」
 目のまえで尋ねられ、
「え、えと……………」
 ナナはどう答えたらよいのかわからず、真っ赤になりなから戸惑った。



 そんな彼女に、

「なんか作ってやるよ。」
 と言ったあとかがんだ薔は、ナナの耳もとでつけ足した。




「それとも、俺のがよかったか?」







「……っ…………!」
 いきなりの近すぎる耳もとだったことと、言われた内容とで、ナナは背中がくすぐったくなり、ビクンと震えた。


「感じてんのか?」

 エロティックな囁きと共に、ナナを抱きしめる薔。

 「あ……の………………」

 ナナの鼓動は、まさに破裂寸前だった。




 しばらく抱きしめられていたが、ゆっくりと薔のからだは離れてゆき、目のまえでナナは囁かれた。


「あとでヤるとしても、とりあえずなんか食え。」


 とね。





 (えぇえ!?あとでやるって、わたしもうこれ以上は、心臓がもたないよ……………!)
 胸を押さえつつ、薔とともに立ち上がったナナ。


 ふと、目に、ところどころがあかく染まった、ベッドのシーツが映り込んできた。

 (あ……………………)

 ナナはせつなくなる。
 あれはきっとものすごく、痛かった、ですよね?




「あ、の………」
「あ?」
 手を握りしめて呼びかけると、ドアのまえで薔が振り向いた。

「ごめんなさい………めちゃくちゃ、痛かった、ですよね………………?」

 くるしくも、深く謝るナナ。


 しかし彼は言った。


「謝んじゃねーよ、」


 え――――――――…?




 手を、離すナナ。





「同意のうえだろ?」

[ 138/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る