※第12話:Game(is Love?).10





「あの、今日はおゆびに、刺さないでくださいよぉ!」
「あぁ。おそらくは、刺さねーよ。」

 おそらくは、やめて!



 ナナはちからを込めて、牙を突き出した。




「さわってもいーか?」
「えぇ!?」

 不安に駆られたナナだったが、本当にさわられただけだった。




 (おぉお……!よかった!)
 その安堵はいくぶんか、つぎの言葉でかき消されることとなる。





「それで今夜は、どこでイきてーんだ?」






「いや、もういいですよぉ…………!なんか今日は色々と、すごい体験ができたんでぇ……………!」
 ナナは恐る恐る、からだをそらした。


「それじゃ意味ねーだろ?」
 そらしたからだは、抱き寄せられる。


「えぇっ!?でしたら、あれですよ、一番痛くない場所でお願いします!!」
「ふーん、」

 とっさに叫んだナナは、叫んだ内容を後悔した。




「なら、胸でいーぞ?」




 …ぇぇぇぇぇえ!?

「い、いや、そこ、アナタさま、一番痛がってましたけど…………!」
「安心しろ。左の傷は、消えつつある。」

 ぎゃぁぁあ!!


「ちょっと、待ってくださいよ………、」


 必死の形相のナナのまえで、薔はTシャツを脱いだ。




「きゃあ―――――っ!!いきなり、脱がないでくださいよぉ!」
 顔真っ赤の、ナナ。



「脱ぐのはいつも、俺だけだな。」



 しかし、そんなことを言われてしまった。



「え、えと、最初のとき、ほとんど脱がされかけましたけど………、」

 そういえば、ね。

「ほとんど、だろ?」


 うぐっ………………!



「まぁ、お前が脱ぎたくねぇなら、別にいいが。」



 この言葉と、さっきまでのおそろしい行動が、ナナのこころを揺れ動かした。


「あ、あの………」
「なんだ?」



「け、血液だけじゃ、ないんで……脱ぎます、わたし………………。」


 そしてリボンを、ほどく。



「無理すんなよ?」
「大丈夫です…………。」



 ナナは震える手で、ブラウスのボタンを外してゆき、


 パサッ―――――…

 ベッドのうえに、脱ぎ捨てた。



 この間、薔はずっと、黙っていた。



 ナナはブラだけになったあと、

 プッ―――――――…

 勇気を振り絞り、それすらも外したのであった。





 (おぉお…………!もう逃げ出したいくらいに、こっ恥ずかしいよ!)
 上半身ハダカにはなったが、ナナは手と腕で、胸元を覆い隠していた。


 もはや、耳すら真っ赤どころの話ではない。


「ねえと思ってたが、けっこうあんな。」


 とか言われてしまったので、

「ぎゃああっ………!ほんっとに恥ずかしいんで、やめてください!」
 顔から火をふく勢いとは、まさにこのことかな?


「脱いだなら、隠すなよ。」

 薔はナナへと、手を伸ばした。

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