※第12話:Game(is Love?).10





 (おぉ〜!ものすごく、いい匂いだよやっぱり!)
 見渡していると、暗さが気になった。
「あの、明かりは?」

 ナナが壁を手探りしていると、その手をつかんで薔は言った。



「ベッドサイドので、我慢しろ。」




 ということで、ナナはベッドに近づき、
「どこ、ですか?」
 と尋ねた。

「手をかざしてみろ。」

 どういうことだ?

 と思いながらも手をかざすと、

 パッ――――――…


 ベッドサイドのナイトテーブルのうえにあった地球儀のようなライトに、明かりが灯ったのだ。


「すごぉ!なんかかっこいいですねこの」


 ドサッ――――…!


 言い終えぬうちに、ナナは、ベッドに押し倒された。


「きゃあっ……!」

 なんだかわけがわからず起き上がろうとするナナに、薔がまたがってくる。


「ちょっ……、あの、なにを」


 顔をあげようと試みたとき、首を、やさしくではあったが掴まれた。


「や…、あ…っ……」
 もがく間もなく、


 チュク――――――…


 ナナは激しく、くちびるを奪われた。



「ンっ……んぅ……っ……………」
 舌が押し入ってきて、絡まるほどに淫らだった。

「ふぅっ……、ん……ンんっ…………」
 なんとも言えぬ、濡れたようないやらしい音を立て、キスをされていた。


「んっ………ン………………」
 ナナがディープなキスに溺れていると、


 スッ―――――…


 ゆっくりと舌を抜き、くちびるをはなすと、薔はナナに向かって数センチほど離れた場所で彼女に問いかけた。



「お前がほしいのは、俺か?それともただの血液か?」









「今日は………どうして、そんなに……質問をなさるん……ですか…………?」
 息を乱すナナは、途切れ途切れに問い返す。

「質問をしてるのは俺だ、答えろ。」

 すこしだけ薔は、起き上がりナナを見下ろした。


「そんな……こと………言えません…よぉ……………」
「そうか。」

 ぐったりとするナナの首から、薔は手を離した。






「ならこの部屋を、真っ赤に染めてやるよ。」







「あの、なんてことを、おっしゃるんですか…………?」
 すこしずつだが、ナナも顔をあげた。


「安心しろ。もちろん、俺の血だ。」
 薔はいたって、冷静である。



「やめてくださいね………?花子ちゃんは、どうするんですか……………?」
「花子は、お前が愛してやってくれ。」
 この返事には、ナナも我慢がならなかった。



「どうしたんですか!?今日の薔さんは、おかしいですよ!?」
 からだを起こし、言い聞かせるように声を張り上げる。
「あぁ、そうかもな。」

 しかし薔は、あまりにも動じなかった。




「お前が俺を、狂わせるんだよ。」





 唖然としたまま見つめるナナのまえで、薔はナイトテーブルに手を伸ばした。

「いいとこに、あったな。」

 そして取り出したのは、さやに入ったナイフであった。


「あの………、」
 ナナのまえで、ナイフはさやから抜かれた。

 カラン――――――…

 床にさやが落ち、音を立てる。


 ナイフはよく手入れされており、銀色におそろしくも光り輝いていた。




「まずはどこから流そうか?」
 ナイフ越しに、ナナを見つめる薔。



「やめて………、くださいってば……………」
「腕でいーか?」

 ナナは青ざめた。


「最初は、切れても意識がある場所がいーよな?」


 薔はナイフを、そっと、右腕に当てる。



 ツ―――――――…

 ナイフは腕を這い、あかい鮮血をにじませていった。




 が、それはすこしだけった。





 バシッ――――――…!



 起き上がったナナが、ナイフを奪うようにして、床にたたきつけたからだ。


 ナイフは床をすべり、部屋のすみへ身をひそめた。



「おい、」


 もう、なにを言われようとも構わないと、ナナは思った。


「なにすんだ?お前」

 ギュッ―――――…


 おそらくこのとき、初めてかな、ナナは彼の話を、遮りました。
 そして、きつくつよく、抱きついていました。

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