第11話:Game(&Down).9





 家に帰ってから、ナナは抜け殻のようだった。

 (え?なに?なにをくださるおつもりなんだ?エッチなコトか?)



 とばかり考えていると、

 18時30分を過ぎていた。



「ただいまぁ!」
 ナナ父が、帰宅した。
 それとほぼ同時に、ナナは出かけようとしていた。

「おぉ?ナナ、どこへ行くんだ?」
 父の質問に、
「ちょっと、学校へ…………、」
 とだけ答えたナナ。
「えぇっ!?こんな時間に!?忘れ物!?お化けでるよ!?」
 驚いたナナ父は、およそヴァンパイアらしからぬ発言をした。

「行ってきます…………!」
 しかしナナは、そうつよく言い残し、家を出ていった。


「ちょっと、お父さん、心配すぎるよ?あとついて行こうかな?」
 と呟いたナナ父。
「雅之、」
 いきなりうしろに、ナナ母が立っていた。腕を組んで。
「ハ、ハニー!キミも一緒に、あとつけるかい!?」
 すでに言うことはストーカーの夫に対して、妻は一言。

「それを、野暮と言うのよ?」
 …………やぼ?

「くだらないこと言ってないで、夕食にするわよ。今夜は雅之の大好きな、冷やし中華だから。」

「ぇえっ!?ありがとう!ハニー!キミとともに、食べるよ!」

 ナナ父のなかで、妻と冷やし中華は最強の組み合わせであった。










 7時、5分前に着いた。
 ここと言われたので、ナナはテニスコートのわきに立って待っていた。


 すると、7時2分前に、薔がやって来た。





「待ったか?」
 そう聞く彼は、Tシャツにジーンズという、ラフな格好だった。
 しかしナナは、なにを着ていくか悩みぬいたあげく、制服で来てしまった。


「ぜ、ぜんっぜん、待っておりませんよ!むしろ同着ですよ!」
「あ?」

 同着ってナナさん、競馬か…………?



「なら、いい。行くぞ。」
 ナナのギャンブル的な発言は、軽く葬られた。


「ど、どこへ、ですか?」
「屋上だ。」

 ……………………えっ?



「まだ残ってるヤツらがいるからな、入れるぞ?」





 たしかに、ちらほらと、教室に明かりはついていた。
 そのなかや、暗いなかを歩いて、


 ふたりは屋上にいた。





「おぉっ……!なんだか、星がまた一段とキレイですね!もしかして、これですか?」
「でもある。」

 空をあおぐナナを薔はすり抜けるようにして歩き、屋上のフェンスのまえに、したを覗き込むようにして立った。


「ちょっと、危ないですよ!もっとこっちにき」
「ナナ、」

 名前を呼び、振り向く薔。




「くれてやるよ、俺を。」





 星は輝き、ひろがりゆく夜空の下、ナナは立ち尽くした。


「い、意味が、わかりません……が………、」
 ナナの頬を、汗がひとすじ伝う。


 そんな彼女を見つめ、薔は静かに、語りかける。



「このままだと、俺はいずれ、お前を壊す。」


 すこしだけ、夜風が吹いた。




「そのまえに、此処で落ちる。死体から流れ出た血をすべて飲み干して、お前だけのものにしろ。」




「なにを、おっしゃって……………?やめてくださいね………………?死んじゃ、やですよ…………………?」




 動けずに、からだじゅうがつめたくて、震えてしまうナナ。






「死ぬんじゃねーよ、生きつづけるんだ。」







 彼女のまえでそう、囁くように力強く言うと、




 ふわっ…





 フェンスを乗り越え、薔はまっさかさまに、

 堕ちていった。









 …………Why.........?

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