第11話:Game(&Down).9




 え―――――――…?

 今このひと、なんて言った?



 “消える”、って、言ったよね――――――…?




 グッ………

 ナナは、拳を握りしめた。



 なんでそんなこと、平気で言うの?
 消えちゃ、やだよ。
 やだ。

 くるしいまでに、かなしいよ―――――――…




「ほ、ほっぺたを…………、」
「あ?」

 ナナは泣きそうだったが、言わないといけないとさとったので、うつむいたまま打ち明けた。




「あの……、薔さんが、つねってくださったほっぺたを、さわられて………………、くやしかったし、かなしかったん、です……………。」
「…………………、」

 薔は黙って、うつむき話すナナを見ていた。



「本当に、恥ずかしいですが……………、だから、惚れてなんて、ないです…………、逆に、ものすごく腹が立っています…………」


 あ、ダメだ…………、
 なみだ、出ちゃうわ……………。


 涙、落とそうとした。

 瞬間だった。




 ギュ―――――…




 ナナはまたしても、しかも今回はちょっと強引に、頬をつねられた。


「たたたたたた!な、なんれすか?」
「つねってやったが?」


 ………………えっ?




「は、はろぉ…………?」
 ※つねられているときにおいての、「あ、あの?」です。「ハロー?」ではないです。


「バカだな、お前はやはり。」

 ………………はい?


「つねってほしけりゃ、言え。むしろ俺たちは、セックスまでしてんだぞ?」


 ぎゃあぁ――――――――っ!!


「お前にとっては、だが。」




 耳まで真っ赤、心臓バクバクのナナは、頬をつねられたまま言われていた。



「あのキモ男の思い込みは、ドン引きにもほどがあんな。」

 パッ


 ほっぺたは、離されました。




「なら、もういい。ところでお前、優勝したらしいな?」

 今度は薔は、ミスコンの話を持ち出してきた。


「おぉお……!そうなんですよぉ……!信じられませんが、こけしちゃんから、聞きましたぁ………!どうしましょうっ……………!?」

 オロオロしだしたナナだったが、

「どうやら俺も、優勝したようだ。」

 と、薔に打ち明けられた。


 ……………えっ?

「ミ、ミスの、ほうですか……………?」
「ここで犯そうか?」

 ぇぇえっ!?


「い、い、いやいや、すみません!イケメンのほうですよね!?」
「まぁな。」



 うそ!?
 本当に!?


「わぁあ……!おめでとうございます!エントリーなさってなかったのに、スゴいですね!」
 ナナは、やたらはしゃいだ。
 なにげに、自身の優勝よりも嬉しかった。


「エントリーしてねーから、細宮はわざわざ報告にきたんだろうな。」

 ………さざみや、って、だれだろう?


 こころに疑問を抱えたナナ。

 は、こう言われました。



「トップになったんなら、あれは守らねーとな。」

 …………あれ?


「あれ、とは?」
「教室でヤったときに、言ったやつだ。」


 教室で、ヤったとき?




『もっといーモン、くれてやるよ。』



 でぇぇえっ…………!?



「いやいやいや!アナタさまの優勝にまさるものは今のところないので、もうすでにいただきました!」
「今夜だ。」


 ……………こんや?



 いつもによって、まぁ、強引ですね。




「今夜7時に、ここへ来い。くれてやる。」




「えっ!?あの……………、」

 なにかを言いかけたナナにそう言い残して、薔はコートを去っていった。








 さて、それは、彼の優勝にも勝るものなのか!?

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