第11話:Game(&Down).9




「テニスって、なかなか楽しいんですね!」
 すこし汗をかいたナナ。
「休むか?」


 と聞かれうなづくと、促されるようにして、コートのわきの木陰に立った。
 ナナは用意していた、ポカリスェットを飲んでいた。


「お前、」

 ゴクゴクとポカリを飲むナナへ、薔からとある質問が投げかけられた。


「好きなやつ、いんのか?」



 ブ―――――――ッ!!


 ナナはポカリを吹き出した。


「ななななな……………!?」
 真っ赤であわてふためき、薔を見る、ナナ。
 しかし薔はまえを向いたまま、壁にうつかかっていた。


「すすす好きなひとですか!?」
「あぁ。」


 ……………ぇぇぇえ!?


 なぜにそれを、聞くんですか?

 アナタさまというひとがいます、とは、おそろしいほどに言えないよ!?



「え、え〜と、います…………。いるんですが、それは、あの……。」
「ロン毛のキモ男か?」



 …………………はい?


 ナナはそう言われ、薔を見た。

 う、うん、イメージで判断させていただくと、どちらも完全に、まったくもって当てはまらないよ!?



「え、え〜と、どちらもまったく、当てはまってないですけど…、」
「まあ、好きならそう思うか。」


 …………えぇっ!?


「いや、好きじゃないときから、そんなふうにはまったく思いませんでしたよ!?ちょっと、正直、悪魔とかは言っちゃいましたが………、」
「あ?」
 薔はナナを見た。




 シ――――――ン……




 ぎゃっ!
 見つめられたままの、この沈黙は、耐え難いよ!


 ナナはなにかを、とりあえず話そうと試みた。

 そんな彼女のまえで、


「あー、いっそハッキリ聞くか。」
 薔は片手で髪をかきあげて、呟いた。


 …………なにを、だ?




「お前のオトコは、3年6組の、林とかいうヤツか?」





 ナナは、唖然とした。

「3年…………?6組…………?林……………?」

 心当たりが、まったくない。


「今朝、ソイツが、俺に言ったぞ?お前のことを、“彼女だ”と。」


 …………ぇぇぇえっ!?

「い、いやいや、わたし、彼氏なんていません!それに3年のひとで林なんてひとは、聞いたこともありません!」
「ソイツは、泣いて立ち去ったお前が、“自分に惚れている”とまで言ったが?」


 ……泣いて、立ち去った?
 3年6組?
 林?




 ぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!



 あのヤロウ!
 広志だよ!
 林夏川 広志だよ!




 ムカァ!!

 なんで広志のヤツは、よりによって一番話してほしくないひとに、話したんだ!?
 訴えるぞ!?広志っ!!




「おい、」

 ……………………はっ!!


「はいいぃっ!?」

 ナナは驚きのあまり、飛び退いた。

「なんも言わねーなら、図星か?」


 え………………?







「答えろよ。返答次第で、俺は消える。」

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