第11話:Game(&Down).9




 そして放課後が、やってきてしまった。



 ドキドキドキドキ

 ナナの心臓は、踊りすぎていた。

 (話…………!ついに、お話が、解き放たれる時がきたよ!)
 ちょっとダジャレみたいなことを考えていると、


「おい、」


 声をかけられた。


「はいはぃい……………!?」
 ビクビクとして薔のほうを見ると、教室にはもう誰もいなかった。
 威圧感によって、下校していた。



「うるせえのが集まるまえに、コートに行くぞ。」

 …………………はい?

「なんで、ですかね?」



「話すついでに、テニスを教えてやる。」






 ということで、ふたりしてテニスコートに立っていました。
 もちろんテニス部がここを使うわけなのですが、まだ彼らは、着替え中とかであったのだ。
 しかし何人かは集まっており、威圧感によって片方のコートは使えるようになった。



「ねぇ、あのふたり、メイベの時の優勝者どうしだよ……!」
「ほ、ほんとだ………!」
 そんなヒソヒソ話が、聞こえたりもした。


「あのぅ…………、」
「なんだ?」

 ナナは若干猫背にまでなり、薔は堂々とネット越しに、彼女を見下ろしていた。


「バスケ部、は?」
「あ?」

 そう、薔はバスケ部員です。


「ああ、あれはな、レベルが違いすぎて話になんねーんだ。」
「ぇぇえ!?」

 驚き、ナナは猫背からは解放された。


「んなこといーから、はやくやるぞ。」
「ラケットに穴は、開けないでくださいよぉ!」

 怯えるナナ。




「安心しろ。優しく打ってやる。」







 言葉通り、ボールは優しかった。
 しかしナナは、まったく打ち返せずにいた。

 (ダメだよ!ぜんっぜん、当たらないよ!)


 ナナがすこし息をきらしていると、


「お前は、ラケットの持ち方からしておかしいぞ?」

 そう気づいた薔が、歩み寄ってきた。


「あ、は、はぁ……………」
 呆然とするナナ。



 すると、


 スッ―――――…


 うしろから、薔の手がナナの手をつかんだ。




「こうだ。」





 あまりナナは聞こえていなかった。
 やたら、真っ赤になっていた。





 これを見ていたテニス部員たちは、

「う、羨ましいにもほどがあるよ………………!」

 と、呟いていた。





 そのあと何回か、ナナはボールを打ち返せた。
 ボールを打ち返せてみると、テニスはけっこう楽しかった。

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