第11話:Game(&Down).9




 バン―――――…!

 校長室のドアが、勢いよく開いた。

 びくびくぅ!
 ほうじ茶を飲んでいた校長先生は、思わず湯飲みを落とした。
「ヤケドしなくて良かったよコレ〜。」
 手が床に届かないため、
「どっこらしょ。」
 椅子から下りて、湯飲みを取ろうとした校長。



「おい、細宮、」



 すると声をかけられ、彼は顔をあげた。


「えぇぇえ!?しょ、薔くん〜!?」
 驚きのあまり、手にしかけた湯飲みを転がす。


「どうしたの〜?足に抱きついちゃったから、セクハラで訴えにきたの〜?」
 この変態チックな質問は、無視された。
 変態チックでなくとも、質問が無視される率は高い、けどね。


「オマエにひとつ、聞いてやろう。」

 …………………はい〜?

「たった一票で二位のヤツとは、やたらロン毛のキモ男のことじゃねーか?」

 ロン毛?
 キモ男?

「確かに、3年6組の林くんは髪長くて、色々と気持ち悪くはあるかもだね〜。投げキッスとかウインクとか、平気でやるし〜。」
 校長先生は、林夏川くんと呼ぶのが面倒だったため、林くん、と呼んだ。
 この時点で話を聞いたひとはおそらく、林という名字の人物の話だと思うであろう。
 さらに校長先生は、気持ち悪くはあるかもと、付け足した。
 投げキッスとかウインクとか、そりゃまぁ無視したくもなるよね!


「やはりな。」
 堂々と、制服のポケットに両手を突っ込んだまま、薔は校長を見下ろしてつづけた。

「細宮、」
「は、はいぃ〜?」



「賞は受けてやる。ありがたく思え。」

 とね。


「ほ、本当に〜!?」
 パァアと顔が明るくなり、大喜びの校長。
「ありがとう〜!校長先生は、薔くんにも見物料をお支払いしたいよ〜!授賞式の日に〜!」

「ふーん、」

 校長の喜びより、薔のこころに引っかかったのは、

「つまり、ミスのトップはナナだったんだな?」

 でした。



「え?あ、はい〜。」
 唖然とする校長。



「そん時だけは、一般公開してやるよ。」



 そんな彼に向かってそう言うと、薔は校長室を出ていった。




「おぉ〜。かっこいいよもう〜。」
 校長先生は、立ち上がる。

「でも開けたなら、ドア閉めてってほしかったよ〜。」
 そう、校長は、ドアを閉めるために歩いていた。

「でもいいよ〜?わざわざ会いにきてくれたんだから、ドアの一枚や二枚、なんてことないよコレ〜。もっといてほしかったよ〜?朝の抱きついた足を、鮮明に思い出しちゃうよ〜。」


 パタン――――――…


 もはや変態的な呟きのあと、ドアは閉められた。
 ちなみに校長先生はこんなんだから、ツイッターをやってます。
 フォロワーの数よりフォローの数のほうが、はてしなく多いんです。
 仕事を終えてからの呟き、夜中まで、ツイートがあまりにも多いため、最初はけっこういたフォロワーは、ほとんどフォローをやめていきました。
 しかし細宮校長は、ツイッターが大好きです。

 ちょっとした、トリビアです。

 ……………………たぶん。

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