第11話:Game(&Down).9
「マジでぇ!?」
いっせいにギャラリーは、いろめき立った。
……いらっしゃった?
意味がわからず立ち尽くすナナのまえで(こけしちゃんはおそらく、ここらで理解できた)、集まっていた生徒たちは大騒ぎをしだす。
「ど、どちらに!?」
「校門に向かってらっしゃるって!」
「ぇえ!?」
その大騒ぎをかき消すかのように、
「キャァア――――――――ッ!!」
校門にて、およそ黄色い絶叫が聞こえた。
「ぎゃぁあ……………!」
人だかりはいっせいに、ナナたちの教室の窓へと向かった。
入りきらないほどの人数だったため、ナナたちは教室のすみに追いやられた。
そんななかで、人だかりは外に向かって、手を振ったりしながら叫んだ。
「キャァア―――――――ッ!!薔さま―――――――――っ!!」
唖然。(by.ナナ)
ザッ――――――…
薔は堂々と校門を通過し、正面玄関に向かって歩いていた。
周りがクソうるせぇとは思ったが、完全なる無視だった。
ここで明かしますが、彼はいつもナナが気づかないうちに席に座っていたので、ありすぎる存在感のなかでも、気配を絶つことができるのです。
目立ちすぎて、めんどくさいんです。
まさにいま現在の、こういうことが。
それがどうやら、おそろしいほどに見つかっちゃいました。
学園祭を振り返れば、まぁ、当たり前ですがね。
「キャア―――――――――――ッ!!」
大騒ぎをする周りは、完全無視の、薔。
「ぎゃあぁあっ!その完全なる無視が辛すぎて、なんかイきそうですぅっ!」
………大丈夫か?キミたち。
その、完全なる無視でギャラリーを絶頂に導こうとしている薔に向かって、この時点でただひとり、声をかけた者がいた。
誰かな?
「あのぅ、薔くん〜。」
「あ?」
振り向いた薔の目には、誰も映らなかった。
「………………、」
無言で再び歩き出そうとした彼の、かなり足元で、またしても声がした。
「ここ、ここだよ〜!」
見下ろすようにしてかなり足元を見ると、そこにはかの有名な、校長先生が立っていた。
「なんだ、細宮(さざみや)か。」
※校長先生は、細宮といいました。
「校長先生の名前、知ってるの〜!?感動だよコレ〜!!」
校長先生はものすごく感動していたが、薔はすべての教師を呼び捨てにするため、全員の名前は把握しているだけの話であった。
「いちいちうるせぇな。用はなんだ?」
そして校長先生に対してもやはり、タメ口(むしろ命令口調)なのだった。
「おぉお〜!校長先生は、キミにならそういうこと言われても、嬉しいよ〜!」
校長先生は、またしてもちょっと変態チックだった。
「あのね〜、イケコンなんだけどね〜、ほぼ全票で薔くんが一位だったから、今度、授賞式をとりおこなうからね〜。」
「あ?」
感動の報告をした校長先生に向かって、薔は一言。
「俺はなんも、してねーぞ?」
「い、い、いや、君、あの学園祭において一番すんごいことをしたよ、コレ〜!」
飛び跳ねる、細宮。
「ふーん、」
しかし薔は、興味なし。
「あー、俺はいい。二位のヤツにくれてやれ。」
「えぇっ!?」
校長先生はとっさに、薔の足に抱きついた。
「二位の子はね、たった一票だけだったんだよ〜。頼むよ〜!」
「おい、」
………………はい〜?
「なにしてんだ?放るぞ。」
…………ぎゃぁあ〜!
「あ、ごめんね〜。つい」
「とにかく、俺はなんもいらねーからな。」
そして校長先生に背を向けると、薔は堂々と歩いていった。
「おぉ〜。もんのすごく、いい匂いだったよ〜。朝から幸せだよコレ〜。」
……この校長先生、どうにかしてくれない?
「でも、残念すぎるよ〜?彼は意外と、謙遜的だったよ〜?」
…………どこが?
校長先生にもどうやら、辞書が必要みたいですね。
「きゃぁぁあ!」
遠くややたら近くやの、黄色い悲鳴を完全無理しつづける薔に、本日ふたりめの人物が声をかけた。
だれだ?
「やい!暮中 薔!!」
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