第9話:Game(+Fete).7




 ナナは387歳にしてはじめて、体育館のステージにて、演説をしようとしていた。


『あの……、』


 拳を固めたが、視線が気になりすぎて、言葉につまった。

 (どうしよう…?言葉が出てこないよ……)


 あたまのなかが、真っ白になっていると、




「あんまかわいくないじゃんね。」





 目の前にいた女子生徒が、わざと聞こえるようにして言ったのだ。





 え――――――――…?




 全体には聞こえなかったが、その周辺とナナにはハッキリと聞こえた。


 クスクス………

 なのでその周りが、バカにしたように笑いだした。




 (なんだろう……?もう、やだよ…、帰りたいよ…)


 泣くのをこらえるために、ナナはうつむいた。




「どうしたんだろう?あの子、なにも言わないんだけど、」
「緊張しすぎじゃない?かわいそ〜。」


 最後の最後にきて、予想外の事態に、体育館中がざわめきだした。



 ナナはこらえきれず、泣く寸前だった。




「ナナちゃぁん?」

 こけしちゃんは心配のあまり、立ち上がってナナにあつき声援をおくろうとした。




 まさにそのとき、






 ダン――――――…!







『やたらヤラしい目で見んじゃねーよ。』







 いきなりステージにあがってきた薔が、ナナのまえにあったマイクをつかんで堂々と言い放ったのだ。






 (え………………?)








 シン――――――…

 体育館は静まり返った。

 驚いたままうつむくナナを、薔はやさしく抱き寄せて、マイクに向かってつづけた。



『こいつは俺のモンだ。よって、見せモンじゃねーぞ?』


 体育館に、ひとつの声は響きわたる。


『どーしても見てぇなら、見物料を俺にきっちり払え。いいな?』






『料金の値引き交渉には、いっさい応じねーからな?』






 ひょいっ



 言い終えると薔は、ナナをお姫さまだっこした。



 タン――――――…




 そしてそのまま軽々とステージをとびおりると、堂々とした姿のまま体育館のド真ん中ロードを駆け抜けていきました。












 おぉぉぉぉぉぉお……!!!!!!




「キャァア――――――――――――――ッッ!!!!!」




 黄色いなんてものじゃない、大歓声なんてものでもない、大絶叫だった。

 男性の声すら、含まれていた。けっこう。




「あわぁあ!まさか、キキキキキス以外、しに行くんじゃないのぉ!?」
 横科は、震えていた。


「よかったわねぇ、三咲さん……………!」
 葛篭はオシャレなハンカチで、涙を拭いていた。


「スプラッタ劇場じゃ、なかったじゃないか!むしろ感動的な、月9みたいだよコレ!」
 吉川は腕を組んだまま、やたらとはしゃいでいた。

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