第9話:Game(+Fete).7




 そして、13時が、針の音と心音を立てながら、いよいよやってきた。






『あ〜。いよいよはじまりましたぁ〜。』

 体育館のステージにて、ここでは立派なスーツ姿で、校長先生が、マイク片手にしゃべっていた。

 そしてかなりの生徒たちは、この学園祭において校長先生はでしゃばりすぎだと、こころで叫んでいた。



『もうこのイベントで終わりだけど、もはやなにも終わらないよね〜。むしろ始まるよね〜。』

 ……………はぃい?


『ちなみに、みんな誰かには投票してね〜。架空の人物やキャラクターはダメだよ〜。芸能人もダメだよ〜。エントリーしてる人だけだからね〜。』


 やはり校長は、


『じゃあ、第32回 夢現祭の、メインイベントを開催しちゃうよ〜。』

 前置きが長かった。





 まずは、イケメン・コンテストのエントリーメンバーが、演説をするコトになった。

 エントリーNo.1から数えて、計13名もいた。

 やたら長かったり、意味不明だったりの演説を聞いていくうちに、


『エントリーNo.9、林夏川 広志!』


 の番がやってきた。




「キャ―――――――ッ!」


 女の子たちは、けっこう黄色い歓声をあげた。


 このときステージ裏でスタンバイしていたナナは、怒りで鳥肌が立った。


『やぁ、みんな、ボクだよ。』

「キャ―――――ッ!」


『絶対にトップだから、なにも言わないよ。見た目がすべてを物語っているからね。』

「は―――――――い!」

 広志は、なにも言わないと言っておきながら、そのあと見た目を引き合いに出した。



『でもね、残念なお知らせがあるんだ。』


 さらに広志は、なにも言わないと言っておきながら、言いつづけた。


『ボク、昨日、運命の出会いをしてしまったんだよ。』

「えぇ――――――っ!」

 (うわぁ…………!なんて気の毒な子なんだぁ………………!)

 ナナはこころから同情したが、まさか自分のことだとはこれっぽっちも思わなかった。


『名前は知らないけど、もう彼女はボクに夢中だよ。でも安心して、ボクはみんなのものだから。』

「先輩、かっこいぃ――――――――っ!」



『だからみんな、絶対にボクに一票いれ』
「あ〜、キミ。」


『はい………………?』

 少しデジャヴなシーンだが、校長先生は広志先輩に向かって言った。


「時間もったいないから、終わらせるね〜。」


『校長先生の、イ・ジ・ワ・ル!』


 このとき、ウインクをしてみせた広志のウインクを、校長先生は完全無視した。



 そしてイケコンは、すべての演説を終えた。








『じゃあつぎは、ミス・コンテストだよ〜。』




 ナナはドキドキしながら、ほかのエントリーメンバーととともに、ステージへ上がった。






「いよいよか。」



 そして、それまでまたしてもヘッドフォンをつけていた薔は、外してナナを見た。




「見つけた…………!」


 そんでもって広志先輩もそう呟くと、食い入るようにしてナナを見ていた。




 ミスコンのほうがエントリーメンバーは少なく、9名しかいなかった。

 そしてナナのエントリーNo.は、一番最後だった。




 やはりミスコンにエントリーされるくらいなので、やたらキレイだったりかわいかったりする女の子たちが、次々と自分をアピールしていった。


 そのなかでも、


『エントリーNo.7、胡桃沢 愛羅(くるみざわ あいら)さん!』


 は、めちゃくちゃかわいくはあった。


『あたし、読モやってるのぉ。』

 ……………どくも?


 ナナにはそれが、毒グモを連想させた。

 毒グモかと思うほどの、妖艶さすら持ち合わせた女の子だったからだ。


『みんなあたしを見たかったら、ナンナ、買ってね〜!』

「はぃい……………!」


 けっこうな数の男子生徒は、目をまさしくハートにはならないが、なるかと思うくらいうっとりさせていた。

『よろしくねぇ〜!』


 愛羅は、ウインクをした。
 このウインクは、無視はされなかった。





 次の子もなかなか盛り上がり、とうとうナナの出番がやってきてしまった。

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