第9話:Game(+Fete).7




「うぅっ……………」

 泣きながら走り、ナナはこけしちゃんの所属する、漫画研究部の発表の場へたどり着いていた。

「ナナちゃぁん?」

 こけしちゃんははっぴを着てハチマキをしており、ナナが泣いていたため、ゆっくりではあるが走り寄ってきた。

「どぉぉしたのぉ?」

「こけしちゃーん………」

 こけしちゃんは覗きこむようにして、ナナによしよしをした。

「わたしはすごく悔しくて仕方なくて、どうしようもないよぉ。ムダにいつも、よくわかってないみたいだけどぉ。」
「うんぅうん。」

 ナナはこけしちゃんが目の前にいることで安心したため、余計に泣きそうになっていた。

 そのナナに向けて、こけしちゃんはさとすように、おっとりと述べた。

「ナナちゃぁん、よくわからないけどぉ、泣くのは大切だけどぉぉ、あたしのまえでも泣いていいのぉ?」

 (え…………………?)

 こけしちゃんは、おっとりしているが考え方は大人びていた。



「泣きたいときはぁ、泣きたいひとのまえで泣くほうがいいよぉ。」



 …………そうだったぁ!!


「ありがとう……!こけしちゃん……!わたしすごく大切なこと、忘れて泣きつづけるとこだったよぉ!」
「うんぅうん。」

 ナナは、ようやく泣きやみ、こけしちゃんの手をつよく握りしめた。


「明日、がんばろうね!」
「もちろんだよぉぉ。」

 こけしちゃんは、ニコニコしている。

「ちなみにこの、明日がんばろう同盟に、もうひとり入れてね!」
「いいよぉぉ。だれかは聞かないから、安心してねぇ。」
「こけしちゃーん!」

 ふたりはひしと、抱き合った。




「じゃぁあぁ、ナナちゃぁん、気分転換にあたしのイラスト見てくぅ?」
「もちろんだよ!」

 案内されてなかに入ると、こけしちゃんは冊子を持ってきた。
「とりあえずこれねぇ、あたしが描いたのぉ。」
「おぉお!ありがとう!」

 なかを開くと、


 ものすごく妖艶な、男の子のイラストがまず目にとびこんできた。


「うぅぅぅぅうまぁぁぁあ!!すごーくお上手だよ!こけしちゃんはまさか、漫画家さんなの!?」
「目指してはいるよぉぉ?」

 こけしちゃんは、嬉しそうにニッコリ笑った。

「こけしちゃんは、本当に天才だね!わたしはこけしちゃんが漫画家さんになったら、必ず本は購入するからね!」
「友達だもんぅ、送るよぉ。その場合はぁぁ。」


 ナナはヴァンパイアになってはじめて、友達と呼ばれた。


「こけしちゃぁあん、ありがとぉぉおう!」
 ナナはものすごく感動した。


「ちなみにあたしぃ、ピクシブやってるよぉ?」

 ………………ぴく?

「“ぴくしぶ”って、なに?」
「今度教えるから、見てねぇぇ?」

 ………おぉお!!
 それ、教えたうえで見られるものなんだね!!

「こけしちゃん、本当にありがとう!!こけしちゃんは本当に、平和な大家族をつくりあげるよ!!」
「エヘヘぇ。」




 この会話を聞いていた他の漫研部員は、けっこう必死で笑いをこらえていた。
 …………………たぶん。

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