※第8話:Game(&Fete).6





「ぁぁあ、先生、わかったわ。スプラッタ劇場は、もういいわ。」

 開き直ると、吉川は言った。



「ほかには、だれか、いないかなぁ?この残念な気持ちを、どうにかして押し隠したいんだが、隠しきれないよね。」

 教室を吉川が、見渡していたとき、



「せんせぇい、」

 なんと、とてもゆっくりとした動作で、こけしちゃんが手をあげて述べた。



「あたしねぇ、ミスのほうにぃ、三咲 ナナちゃぁんを推薦したいのぉ。」




 と。









 (え……………?)
 ナナは、唖然とした。
 (な、なぜにこけしちゃんは、あんなにもかわいらしいご自身の立候補を差し置いて、わたしを推薦したんだ?)

 香牙、つかってないよ?



「いろんな意味でぇ、ナナちゃぁんは素直すぎるいい子だよぉ?」
 こけしちゃんは、ニコニコしている。


 すると、


「た、確かに、言われてみると……………、」
 教室中が、ざわめきだした。

「最初のころは、なぜかおそろしいくらいにフェロモン出てたけど、今は出てないけど、たしかに素直すぎるよね。」
 もはや、褒められているんだかがわからない。




「それにこないだ三咲さん、“あの方をお姫さまだっこした”し!」

 勢いあまって、だれかが叫んだ。

「そうだよね〜!!」
 吉川はその瞬間において別の教室にいたので、キョトンとしていたが、生徒たちはみな納得のあまり騒ぎ出した。


 瞬間、



「お前、」



 ざわめきのなかに、声は貫かれた。




「そんなことしたのか?」















 しじまのようななかにおいて、声だけはこだまする。


 唖然としているナナに向かって、まえを向いたまま、薔は言った。



「んな事させたのは、どこのどいつだ?」



 ……………………はい?




 このとき、事態を把握していない吉川と、言った当人の薔を除いて、だれもがさとった。






 (………ご自身のことだとは、これっぽっちも思ってないよ!!)

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