第7話:Game(+Disease).5




 ナナのほおを涙がつたい落ちたが、それはひとすじとしてちからづよく消えていった。


 目を開けると、


 薔はまだ瞳を閉じていたが、なんだか少しだけ、




 世界が変わってみえた。







 スッ――――――…


「さて、行くか。」


 自然に立ち上がり、薔は言った。
 そして半分残した花束を、持って、歩きだした。










 またしても無言で歩いたのだが、あまり気まずくはなかった。

 (それにしても、すごいひろいね、ここは!)





 すべてのいのちはどこでいつの世界においても、生きつづけております。






「おい、」

「はぃぃぃぃぃぃい!?」

 いつものことながら、いきなり声をかけられた。


「俺はこのあと、行くべき場所がある。よってお前は、帰っていーぞ。」

「え?あ、は、はい……………」

 ここで薔が振り向く。


 またしても少し、風が吹いた。



 ナナは鼓動をおさえるのに懸命になっていたが、赤面をおさえられるまでにはいかなかった。


「お前、まだ耳すら赤いな。」
 い、いや、あの、それ、アナタさまのおかげなんですけど………………



「まだ熱下がんねーのか?」


 そして薔が近づいてくる。



 よく目のまえに立たれるわけなのだが、

 ナナが耳すら真っ赤でうつむいていると、


 スッ―――――――…


 薔はナナの前髪をかきあげて、おでこに手を当てたが、




「あー、やたら残念なことに、手じゃわかんねーな。」




 コツン―――――…




 つぎに、自身のおでこを、ナナのおでこにくっつけた。





「立派に熱あんじゃねーか。薬飲んでんのか?ちゃんと。」






















 無理です。
 お薬じゃ、治せません。

 でもあのお薬は、あなたさまがくださったから、宝物ではありますが、薬は薬です。


 病気、なんでしょうけど、


 どこまで医療が発達しようと、
 どれだけの研究がなされようと、
 どれだけ大金をはたかろうと、


 この病気は、あなたさまにしか治せません。

 逆に悪化させるのも、あなたさまだけです。




 厄介ですね。

 くるしいですね。

 本当に、泣けそうですね。



 でも、生きてきて、生きているあなたに出逢えて、こころから、しあわせですよ。


 本当にありがとうございます。



 “恋”は、きっと、“病”です。


 でも、病は恋じゃないから、等しくはありませんけどね。

[ 80/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る