第7話:Game(+Disease).5




 いつものことながら、無言で歩いてゆくと、ここら一帯でいちばん大規模な、霊園にさしかかった。



 (うわぁ………!ヴァンパイアのわたしが、こんな神聖な場所に来ちゃって、よかったのかなぁ!?)

「おい、」

 …………………は!!

「はぃぃぃぃぃぃい!?」
「ムダに立ち止まんな、行くぞ。」
 気がつくと、10メートルほど離れていた。

「は、はい……………」




 そのままナナは、黙って薔のあとをついて行った。






 よく磨き上げられた墓石のまえで、薔は歩みを止めた。
「ここだ。」

 気づくと彼は、おそらく霊園に入ったときからか、左手は出し、花束は束をうえにして持っていた。


「お前に、立派な役目を与えてやろう。」
 はい?

「水をくんでこい。」





 ほかの参拝客のやり方を見て、見よう見真似で桶に水をくみ、ナナは薔のもとへと戻っていった。

「やたらムダにおせーぞ、お前は。」

 などと言われながらも、きちんと花をそえ、線香に火をつけた。
 風がいくらかあったため、てこずりはしたが。
 そしてこのとき薔は、花束の花を半分残した。










 ふたりして、しゃがんだ。
 薔が目を閉じて手を合わせたので、ナナもそうした。
 そして、きっとこれは、拝み(祈り)だと気づいたので、ナナはこころにつよく、思い浮かべた。











 このひとを生んでくださって、育ててくださって、大切にしてくださって、ありがとうございます。
 そしてここにいてくださって、ありがとうございます。

 わたしでは、あまりにも未熟者ですが、“このひとを本当に大切におもうひと”に、つけくわえていってくださいませ。
 逆につけくわえていただけるように、生きてゆきます。





 本当に、ほんとうに、ありがとうございます。

 ご安心して、どうかやすらかに、大切におもいつづけていって、くださいね。

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