1 はっきり云おう。私は世界に大嫌いなものが三つある。まず一つ目、非凡。これは…まあ当然だろう。なんたって私は平和大好きだ。平和、ラブ!二つ目、幽霊。幽霊なんて非科学的なもの、私は信じたくもないが、科学的に実証出来ないんだから断定していないとも云えない。だからこそ実在するか解らないから私は苦手だ。そして三つ目―――――…折原臨也。いつもにこにこにこにこ胡散臭い笑顔を浮かべている。だけど裏では人を騙すのが好きとかいう。…まあ、変人で変態で最悪野郎。だけど今、その最悪野郎が私の目の前にいてにこにこと笑みを浮かべている。なんでこうなったんだ。私はコイツと関わらないように極力注意をしていたのにッ! 「響ちゃん?」 『何、かな。折原くん』 「理由がなくちゃ響ちゃんに話し掛けちゃいけないの?」 ホント、コイツだけはどうしても苦手だ。これだったら暴力的だけど解り易い平和島くんの方が断然にいい。 『そんなこと、ないけど―――、』 「あはは、ごめんね。冗談だからそんなに怖い顔しないで」 嗚呼、私はそんなに怖い顔をしていたんだ。ここに鏡がないからどんな顔をしていたか解らないけど。寧ろ私の前にあったのが折原くんじゃなくて鏡だったらどんなに良かったことか。 「アンケート、出してないの響ちゃんだけなんだよね」 『―――アンケート?』 「うん。ほら、今日の朝配られたやつ。俺日直だから先生に届けなきゃいけないんだよねー」 確かに朝そんなのが配られていた気がする。私は急いで机の中からお目当てのものを出す。 『あー、ごめんね、折原くん。まだやってないから先に他の人の分出していいよ?私は自分で出すから』 「嗚呼、待ってるから構わないよ」 『いや、だから、私まだやってないから、』 「響ちゃんが終わるの待ってるよ。そうすれば響ちゃんが態々先生のところへ持っていくこともないしさ」 確かに、その通りだ。だけど私はこの誰もいない放課後の教室の空間に折原くんと一緒にいるということが嫌だった。だけど断る理由もないし、折原くんの善意を受け取らない訳にもいかないから私はシャープペンを持ってアンケートを見詰める。 [しおり/戻る] ×
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