赤司視点

俺の部屋にいきなり慌てた様子の癒月が飛び込んで来た。息を切らしている癒月を少し笑って迎え入れる。そんなに慌ててどうかしたのか、と尋ねた。
『征十郎が黄瀬くんに殴られた、って聞いて…!』
「ああ、そんなことか」
やっぱり、としか云いようがないな。絶対にそのことを聞きに俺の元へ来ると思っていた。
『そんなことって…。頬っぺた赤くなってる。大丈夫?』
「大したことはない」
『でもどうして黄瀬くんが「癒月、」
彼女の名前を呼んで手を引いて抱き締める。前みたいに強引なものではなく、軽く抱き締めるだけだ。癒月もそれがわかったのか抵抗はしなかった。
「黄瀬の名前何て呼ぶ必要ない。癒月は俺だけの名前を呼んでくれたらそれでいいんだ」
『―――…征十郎は、独占欲が強いね』
私達付き合ってるわけじゃないんだよ?、と呟いた彼女の肩に自分の顔を埋める。眉間に皺が寄ったのを、癒月に見られたくなかった。
「癒月だけは誰にも盗られたくないんだ」
そのうち、俺だけのものにするさ。だけど今じゃない。今はまだ早い。だからゆっくりゆっくり、時間を掛けて癒月を自分のものにする。

窓辺のしあわせ
(今はまだ、このままでいいんだ)


title//花畑心中

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