「どうしてっスか。何でこんなことまでされて癒月っちは赤司っちの傍にいるんスか!痛いって、苦しいって思わないんスか…っ!」
黄瀬くんは涙を流しながら私にすがるように抱き付く。それからゆっくり身体を離して私の首の包帯をするすると解いた。赤くなった私の首が黄瀬くんの目に晒け出される。
「何で、こんなキスマークまで…」
彼の手が、優しく私の首を撫でる。その行為が擽ったくて少し身を捩った。
『黄瀬くん』
彼の目をしっかりと見詰める。
『もう私に関わらない方がいいよ』
彼の目が哀し気に揺れる。それに少しだけ罪悪感を感じた。
『さつきちゃんと青峰くんにも、そう云っておいて』
離れないと、きっと後悔することになるよ。みんなみんな、後悔する。彼の唇がどうして、と弧を描く。私はそれに笑顔を見せる。
『―――…ごめんね』

この恋が叶わないとして、僕の心臓が拍動を止めることはない
(ちゃんと笑顔をつくれただろうか)
(あんな辛そうな顔で謝んないでよ)


title//花畑心中