首に包帯を巻いて学校へ来た。目立ってしまうが仕方ない。しかしそれに包帯を付けないで、赤い手痕が残っている首を晒すのは非常に困る。目立つのを承知で包帯を付けるのは致し方ない。教室へ来るまでにも何人もの人に興味を持った目で見られた。そして教室に着く。既に隣の席の黄瀬くんはいて、彼は此方に気付いたのか私に目を向けた。此処は気まずくならない方がいいんだろうか。昨日告白された相手にいつも通り接するのは可笑しいんだろうか。
『おはよ「その首、」
おはよう、そう云う前に言葉を遮られた。彼の視線は私の首。青冷めたような怒ったような顔をして私を見た。頬の湿布のときは云い訳が思い付いたけど、流石に首の包帯には何と云っていいのかわからない。私が黙っていると彼は私の手首を掴んだ。
「ちょっと来て」
『え、何、』
足を速める彼に引き摺られるように付いて行く。連れて来られたのは死角になっている階段の下。此方は空き教室が多いからあまりこの階段は使われていない。だから人が来ることは滅多にない。彼が私を壁に押し付ける。左手は彼に掴まれていて動かせない。
『どうしたの?』
「どうしたんスか、その首」
どう答えたらいいのかわからない。黙っていた私に黄瀬くんは怪訝そうな目を向けた。そして小さく赤司っちっスか、と尋ねる。
「赤司っちが癒月っちにそんなこと」
当たっているから否定何て出来ない。だけど、何か云わないと、と思いつつも私の頭では何も思い付かない。
「赤司っちがまた癒月っちに暴力を…っ!」
『また、って何?私、黄瀬くんに何か云ったっけ?』
「前の頬っぺたも、手首の包帯も、今回のも、全部赤司っちでしょ」
女の子の身体に傷を付ける何て、と云って彼は嘆いた。否定はしないけど、何で黄瀬くんがそんなに怒るのかわからない。それを素直に黄瀬くんに伝えれば、肩をがばっ、と掴まれて抱き締められた。
「…俺、心配してるんスよ」
気付いてよ、彼はそう云ってまた嘆く。黄瀬くんが顔を私の肩に押し付ける。何故かその部分が濡れているような気がした。

リミットラインオーバー
(そして私はまた彼を拒絶する)


title//花畑心中

×