黄瀬くんの真剣な瞳から目を逸らせないでいた。何分経っただろうか。いや、何秒だったかもしれない。どれくらい時間が経ったのかわからない。彼は何も喋らなかった。きっと、私の答えを待っているんだと思う。
『…私、征十郎が消えろって云ったら征十郎の前から消えるように努力するよ。征十郎が死ねって云うんだったら―――…私は征十郎の為に死んでもいいと思ってるよ』
「……っ」
黄瀬くんが息を呑むのがわかった。眉間に皺を寄せて私を睨み付ける。
「どうしてっスか。どうしてそこまで赤司っちに入れ込むんスか。どうして消えるとか死ぬとか云うんスか。わけわかんねえっスよ」
『それだけ私の中で征十郎の存在が大きいからかな』
征十郎が私に依存しているのはわかっているつもりだ。それと同じように私も征十郎に依存してる。唯の幼馴染みにどうしてそこまで入れ込むのか理解出来ないかもしれない。それでも私の中で征十郎の存在は絶対で、征十郎の中で私の存在は大きかったと思う。きっとどちらかがいなくなったらこれから先、生きていけないかもしれない。
『征十郎は私がいなくなったらきっと壊れちゃう。だから、』
ごめんね、そう云って彼のさらさらの髪を撫でた。彼は唇を噛み締めて下を向いた。
「―――…わかんないよ、癒月っちのこと」
『…理解して貰おうと思ったことはないよ。…黄瀬くん、ここまで送ってくれてありがとう。後は大丈夫だから』
もう一度ごめん、と呟いて彼に背を向けて歩き出した。

片恋の向こう傷
(彼に酷なことを云ったこと、わかっている)


title//花畑心中