黄瀬視点

「きーちゃん、」
弱々しく俺の名前を呼ぶ桃っち。何スか、と尋ねれば彼女は大丈夫か、と返した。大丈夫、って何が。俺、何か可笑しい?
「癒月ちゃんは赤司くんの幼馴染み、なんだよね?」
云いにくいのか視線を上に向けたり下に向けたりする。明らかに挙動不審だ。
「そうっスよ」
「大切にしてるんだね、赤司くん」
「…何が云いたいんスか?」
「単刀直入に云うけど、癒月ちゃんって何処か無知な雰囲気を漂わせてるんだよね。ちゃんと相手の気持ちは考えられるんだけど世間知らずと云うか…。それって赤司くんが必要以上に人間を癒月ちゃんに近付けなかったからだよね。自分だけしか癒月ちゃんに近付けないようにしたんだよね」
彼女の考えは的を得ている。流石としか云いようがない。
「―――…大変だよ?相手はあの赤司くん何だもん」
「それでも好き、って云ったら?」
「…本当は止めなよ、って云った方がいいんだろうけど」
彼女はそこで溜め息を吐いた。そして桃色の瞳で真っ直ぐ俺を見据える。
「頑張って」
女の子に手を上げるような人に癒月ちゃんを任せられないよ、と彼女は続けた。気付いてたんだな、と思って少し驚いた。青峰っちは多分気付いてないのに。それは桃っちが情報能力に長けているからか、はたまた、同じ女の子だから気付いたのか。
「桃っちは何でそこまでするんスか?今日初めて逢ったんでしょ?」
「今日初めて逢ったとかそんなの関係なく、私は癒月ちゃんのこと友達だと思ってるよ」
癒月ちゃん可愛いから私気に入っちゃった。その桃っちの言葉に呆れたような嬉しいような気持ちになった。ホント、桃っちには敵わない。
「だから赤司くんから癒月ちゃん、奪ってね」
「―――…勿論っス」

奇人揃いの青春群像
(癒月っちを救いたい。自分のものにしたい。だけどそれには最大の敵がいる)


title//花畑心中

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