黄瀬視点

癒月っちのところに桃っちと青峰っちが来た。まさか本当に来るとは思わなかった。癒月っちに申し訳ないと思いながらも、癒月っちの世界が広がるのはいいことなんじゃないかとも思う。癒月っちの世界に赤司っち以外の人間が入って来るのを赤司っちは予想していないんじゃないか。赤司っちが知らないとこで癒月っちは確実に一人で歩き始めてるんスよ。
「青峰くんと私は幼馴染みなんだよ」
『幼馴染み?二人が?』
「うん」
「腐れ縁みたいなもんだけどな、さつきとは」
『でもさつきちゃんは青峰くんのこと名前で呼んでないよね?』
桃っちと癒月っちは名前で呼び合うようになったようだ。いい傾向なんじゃないだろうか。
「中学入る前まではね、大ちゃんって呼んでたんだよ?だけど流石に中学生になってからは周りの目もあって名前では呼べなくなっちゃった」
『―――…周りの目、って何?』
「癒月っち!」
少し大きな声で桃っちと癒月っちの間に入れば癒月っちの視線は俺に向いた。急いで癒月っちの包帯を巻かれていない方の手首を掴む。
「次は移動教室だしそろそろ移動しよ!」
『あ…、そうだね。じゃあさつきちゃん、青峰くん、ばいばい』
ばいばい、癒月っちのその言葉は何だか残酷だった。もう私と関わることもないよね、という意味を含んでいたと思う。それに俺が彼処で間に入ったのは癒月っちがあまりにも無知だと思ったから。勿論勉強とかそういうものじゃない。人間関係については無知だと思った。きっと赤司っちが癒月っちに近付く奴は排除してたからだと思う。無意識に残酷なことを云う、無知な子供みたいだ。

宇宙を壊してみたかった
(彼のつくった世界を壊して彼女だけの新しい世界を見せてあげたかった。その中に俺という存在が入っていたらどれだけ嬉しいだろう)


title//花畑心中

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