「初めまして。有栖川癒月ちゃん、だよね?」
急に昼休みに桃色の髪の美少女に話し掛けられた。その後ろに控えているのは目付きが悪いガン黒。誰だろうか。何かしてしまっただろうか。彼女達と面識はないと思うし。
『そう、だけど』
「あー!桃っちと青峰っちじゃないっスか!」
どうやら黄瀬くんの知り合いらしい。兎に角ガン黒の方の目が怖い。黄瀬くんの知り合いらしいから大丈夫、だと思うけど。
「どうしたんスか?」
「噂の癒月ちゃんが気になって」
『噂…?』
横目で黄瀬くんを睨む。噂とはなんだ、そう尋ねると言葉を濁した。そんな私達を見ていたも、桃っちさん?(私は彼女達の名前を知らないから)は悪い意味ではない、と慌てて訂正した。
「きーちゃんが気に入ってる子がいる、って聞いてたから逢ってみたかったんだ」
きーちゃん?また新しい名前だ。戸惑っている私に気付いた黄瀬くんは俺のことっス、と云った。成る程。黄瀬くんだからきーちゃん。
「私、桃井さつきです。隣のクラスなんだ!それでこっちが青峰くん」
「…青峰大輝」
さっきまで黙っていたガン黒くんが初めて口を開く。なんか、迫力が…。ぺこりと軽く頭を下げておいた。
『え…と、ご存知の通り有栖川癒月です』
「二人は一緒のバスケ部何スよ。桃っちはマネ」
『へえ、そうなんだ』
バスケ部…。イコール征十郎と頭が認識する。これは、まずいんじゃないのか。また征十郎が怒るんじゃないか。今度こそ征十郎に嫌われてしまうんじゃないのか。だけど、征十郎はバスケ部に来るなと云っただけでバスケ部の人達と関わるなとは云っていない。ということは?ああ、私は征十郎のこととなるとびくびくしすぎだ。彼に嫌われるのだけはどうしても怖い。
「癒月ちゃん、って呼んでもいい?」
そう尋ねる桃井さんに曖昧に頷くことしか出来なかった。

愛しいから弱い
(可愛い子だね、きーちゃん)
(え!俺に聞くの!?)
(でもきーちゃんだって思ってるでしょ?)
(う…、まあ癒月っちは可愛いっスよ)


title//花畑心中

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