今日は日直で教室で一人日誌を書いてさて帰ろう、と思って校舎を出てみると大粒の雨が降っていた。最悪だ、傘を持っていない。帰れない。この雨で帰るものなら制服がびちょびちょに濡れてしまうだろう。仕方がない、雨が止むまで此処で待っていよう。そのうち止むだろう。…多分。 「―――…癒月?」 『征十郎』 名前を呼ばれて振り返ってみると部活が終わって帰ろうとしている征十郎がいた。彼も傘を手に持っていない。 『部活終わったの?』 「ああ。今から帰ろうと思っていたんだが、」 目を空に向ける。私もそれに続いて空を見上げる。 「これじゃ帰れそうにないな」 『傘は?』 「忘れた。癒月もだろ?」 『正解』 「このまま此処で止むまで待つか、家まで走って帰るか」 『私が走って帰る何てことすると思う?』 「思わない」 即答。きっと征十郎はわかっていて云った。ふと笑ったときの表情に少し見惚れた。 「どうかしたか?そんなに見詰められると穴が開く」 『ごめん。唯格好いいな、と思って』 「いきなりなんだ」 『私の幼馴染みは格好いいと改めて思ったんだよ』 「だったら癒月は可愛いだろ」 征十郎の言葉に私の全身の動きが停止する。 『―――…何、いきなり』 「俺の幼馴染みは可愛いと改めて思ったんだよ。何て、癒月の真似をしてみた」 征十郎の左手が私の頭を撫でる。気持ちいいと思いながらゆっくりと目を閉じた。
雨脚と君のご機嫌について (今日、機嫌がいいね) (そうか?…あ、小降りになったな。そろそろ行こう)
title//花畑心中 |