教師と生徒の恋模様 | ナノ




25 : 下校拒否の行く末


最後の学校から家までの道のりを銀八先生と並んで歩く。家まで送る、と云って先生が付いて来てくれたのだ。いつものバイクじゃなくて徒歩を選んだところを見ると、少しでも長く私と一緒にいたいと思ってくれたからかもしれない。この道を通るのも最後かと思うと自然と足取りはゆっくりしてくる。
『…銀八先生、今までありがとうございました。先生のお陰でこうやって三年間過ごせました』
「お前はまたそうやって泣く」
『だって、卒業ですよ、』
涙の止まらない私に銀八先生は近寄って来て涙を指で拭ってくれる。それが恥ずかしくて鼻を啜って照れ隠しをした。
「今生の別れじゃねェんだからあんまり泣くなよ。それに…俺が云ったこと忘れた?」
『先生が云ったこと…?』
何かあっただろうか。記憶を遡らせるけれどなかなか出てこない。その隙に先生は私の腰と後頭部を引き寄せた。いわゆる、先生に抱き締められてる体制だ。
「俺がどんだけ我慢したと思ってんだよ。やっと触れた」
『あ、あの、先生!』
そういえば先生は私が卒業するまで手は出さない、って云ってたっけ。先生の云っていたことがようやく理解出来た。先生の胸に頭を預ければ心臓が早い鼓動を打っていた。先生でも緊張してるんだ、と思って私まで恥ずかしくなった。
「その先生、っての止めねェ?」
『ど、どうしてですか?先生は先生じゃないですか』
「そうだけどさ。お前も卒業しただろ?だったら俺も先生としてじゃなくて一人の男として見て欲しいわけ。だから先生、じゃなくて名前で呼んでくれよ」
『銀八…さん?』
「呼び捨てでもいいのに」
『年上の方を呼び捨てなんて出来ませんよ!』
「まあ今はそれでいいけど」
今は、ってことはこれからがあるわけで。先生、いや、銀八さんがあまりにも優しく笑うものだから心臓のどきどきが止まらなかった。
「ももこ、」
銀八さんの長い指が私の顎と頬に触れる。一瞬一瞬が格好よくて思わず見惚れた。ゆっくりと綺麗な顔が近付いて来る。私は自然と目を閉じていた。この後、何をするかわかっていたから。
『―――…っ、』
軽く、本当に触れるだけの口付けをした。一秒も触れていなかったかもしれない。だけど私にとっては一分のような気もしたしもっともっと長かったような気もした。
「ももこ、好きだ」
『私も、銀八さんが大好きです』

下校拒否の行く末
(帰りたくないって云ったら銀八さんは私のことを拐ってくれるだろうか)

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