15 : 上手なチョコの渡し方 調理実習で作ったチョコを大切に持って廊下を走る。廊下は走るな、の文字なんて今回は見ないフリ。沖田くんと土方くんと神楽ちゃんと妙ちゃんにチョコを欲しいって云われたけど丁重に謝って(申し訳ないけれど)なんとか死守した。沖田くんはかなり渋っていたみたいだった。それでも、私は先生に渡したい。先生は甘いものが好きだから喜んでくれるかな?国語教科室の扉をノックすると中からいつもの気だるげな声が聞こえた。 『先生!』 「おー、さくらか。どうした?」 『あの、ですね』 「ん?」 『これ、調理実習で作ったんです!だから是非先生に食べて貰いたくて。あの、うまく出来てるかは自信ないんですけど』 先生はチョコを見ると驚いたように目を見開いた。 「何?さくらの手作り?」 『は、はい。いらなかったら捨てても、』 「いや、嬉しい。有り難く食べさせて貰うわ。サンキュ」 先生があまりにも嬉しそうに笑うからこっちは恥ずかしくなった。そんな大層なものじゃないんだけどな。味可笑しくないかな? 「だけどさ、」 『はい?』 「ももこからのあーん、はねェの?」 にやっと笑う先生。こんなときばっかり名前呼びは卑怯だ。絶対顔真っ赤になってる。 上手なチョコの渡し方 (恥ずかしくて死んでしまいそう) [しおり/戻る] ×
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