教師と生徒の恋模様 | ナノ




10 : 忘れてください


『先生、それって―――、』
嫉妬というものですか、私がそれを口にする前にガタンと椅子が鳴る。音のした方を見ると高杉くんがいつの間にか身体を起こしてじっと此方を見詰めていた。
『た、かすぎくん?起きてたんだ』
「とっくにな」
高杉くんは何を考えているのかわからない目で先生と私を見詰めた。とっくに、ということは会話はどこら辺から聞かれていたんだろうか。それとも聞かれていなかったんだろうか。聞かれていたとしたら非常に不味い気がする。だけど私と銀八先生は如何わしい関係じゃないんだから、別にいいのかな。
「あー…お前も早く課題終わらせちまえよ。さくらはもうすぐ終わるぞ」
「面倒臭ェ」
「お前なァ、一応勉強は出来んだから授業には出ろよ。そうすりゃあ俺だってお前の補習に付き合うことなんて、」
そう云った先生を高杉くんは鼻で笑った。思いっきり馬鹿にしたように。
「俺が補習出なかったとしても、てめえにはソイツがいんだろ?ソイツはこれからもいい子に補習出んだろうよ。…それともソイツと一緒にいんのは苦になんねェのか?」
その一言に動きが止まったのは銀八先生。その隙に高杉くんは帰る、と云って鞄を掴んで教室の扉の方へ向かって行った。しかし何を思ったのかふと立ち止まって私の方に振り返った。
「てめえも、教師との恋愛なんてまじで出来ると思ってんのか?禁断の恋とかいうのに憧れでもしてんのか?そんなの所詮、空想の中の話だろ」
高杉くんの言葉に頭が真っ白になった。高杉くんはさっさと歩いて行ってしまうし。ホント、酷いなあ…。生徒が教師と恋愛なんて所詮漫画とか小説とか映画の中でだけのことだってわかってる。誰よりも一番わかってるのは私だ。もし友達と先生が付き合ってると知ったとき、祝福出来るだろうか?多分心から祝福なんて出来ないと思う。禁断の愛だなんだ云うけれど、現実じゃないからこそ赦せるんだ。だけど、と思った。それでも好きなのはいけないんだろうか。それでも先生だから好きになった、というのは綺麗事だろうか。ねえ先生、
『先生が好きです』

忘れてください
(どうせこの想いは叶わないんですから)

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