パーティーの始まり
そうしているうちにリドルくんが現れ、パーティーの開始を告げる。
「ナツキ、監督生、差し入れありがとう」
「味見したから大丈夫だとは思うんだけど、」
「ナツキ先輩、大丈夫ですよ。リドル先輩、自信作なのでぜひ食べてください」
みんなで頂くよ、とリドルくんは微笑む。私たちの前にはキラキラと美味しそうに輝くトレイ先輩お手製のケーキやタルトが並べられていて、それに比べたら私たちの差し入れはちっぽけな存在かもしれないけど、同じくらい愛情は込めてあるから良しとしよう。
「……それは先輩が作ったのか?」
セベクくんが指さすのは私とユウちゃんが持ってきたクッキー。ハート型や星型、チェック柄といった定番のものだけでなく、ハーツラビュル寮をイメージしてトランプ風に作ったものや薔薇やハリネズミなども作ってみたのだ。今まさにリドルくんが口に運ぼうとしているのはハリネズミの形をしたクッキー。一番苦労したやつだ。
「私とユウちゃんが作ったんだ」
「僕も食べても良いだろうか」
「えーっと、」
ちらり、とリドルくんの方へ視線を向けると、僕は構わないよとクッキーが乗ったお皿を差し出される。セベクくんはそこから1枚、ハート型のものを取ってパクっと口に入れる。
「どう、かな?」
「……美味しい」
「良かった」
ハリネズミのも美味しかったよとリドルくんからもお褒めの言葉をもらう。
「もっと食べたいくらいだが、これはリドル先輩へのものらしいからな。残念だ」
「今度セベクくんにも作ってあげようか?」
「っ!本当か!?」
「う、うん。嫌じゃなければ、だけど」
「嫌な訳ない!楽しみに待っている」
突然大声を出すからびっくりしたけど、喜んでもらえてるみたいだ。リドルくんもセベクくんに向かって良かったね、と笑っている。穏やかな時間だな。
「むー……」
「ユウちゃん?どうしたの?」
さっきから無言でじーっとこちらを見てくるユウちゃんに話しかければ、不貞腐れたような顔を向けられた。
「先輩の人タラシ」
「へ?」
セベクくんもユウちゃんの様子がおかしいと思ったのか、不思議そうに見ている。ユウちゃんはそんなセベクくんに向かってあっかんべーっと舌を出した。
「ナツキ先輩はそう簡単には渡さないもん。ふんっ」
「監督生はどうしたんだ」
そえ問われるが、私にも分からない。