ゆっくり愛に溺れる





アズールくんと付き合うことになって、いくつか約束したことがある。

その1、クラスメイトといえどリドルくんとジェイドくんと仲良くしすぎないこと。
授業や移動教室のときは一緒にいても構わないけれど、お昼や放課後までベッタリなのはだめだと言われた。

その2、お昼はなるべく一緒に取ること。
アズールくんとはクラスが違うし、放課後はモストロラウンジがあるからゆっくり一緒にいられる時間が少ない。だから、お昼は2人で食堂などで一緒に食べようと決めたのだ。

その3、異性と2人で出かけるときは逐一連絡すること。
普段休日はユウちゃんとオンボロ寮で過ごしたり1人で出かけることの方が多いが、たまにリドルくんジャミルくんと出かけることがある。映画館や本屋、日用品の買い出しなど場所は様々だ。異性と2人で出かけること自体は禁止されてはいないけれど、あまり良い顔はされない。それでも、リドルくんとジャミルくんはただの友人であると、彼らも私のことをそういう目で見ていないと分かっているからかアズールくんもこの2人なら、と許してくれた。他の人と出かけるときにはアズールくんの許可が必要になる。まあ、他の人と2人で出かけることなんてないし、あとはユウちゃんを混じえて複数人で出かけるくらいだ。

その4、アズールくんからもらったブレスレットを肌身離さず持つこと。
何でも、これは防衛魔法が込められているとか何とかで魔法で攻撃されたときに発動するようになっているらしい。らしい、というのも説明を受けたとき聞き流していたから詳しく覚えていないのだ。

このブレスレットにはGPSも組み込まれているそうで、位置情報がアズールくんに把握されるようになっている。

これはこの前学園を探検していたとき、自分の方向音痴さを忘れてフラフラと気の向くまま進んでいたら帰り道が分からなくなってしまい、ちょうどそのときメッセージアプリでやり取りしていたリドルくんに助けを求めたことがあるからだ。ちょうどその時間はモストロラウンジの開店前準備だから忙しいだろうとアズールくんに連絡するのは遠慮したのだが、その判断がまずかったらしく何ですぐ僕に連絡しないのだと小一時間説教されてしまった。そのため、アズールくんがイデア先輩に頼んでGPS機能を追加してもらったと言う。

ユウちゃんにブレスレット可愛いですね、と言われ防衛魔法とGPS機能があるんだってと伝えると、「GPS……?流石にそれは」と笑顔から一転真顔を通り越してドン引きされてしまった。先輩はそれで良いんですか?と聞かれ、別に不自由はないから、と答えると複雑な顔を向けられた。

アズールくんとの約束でパッと思いつくのはこれくらいかな。あとは約束という名の小言を言われたけど、こちらも聞き流していたからよく覚えていない。



「だから、……ナツキさん。僕の話聞いてます?」
「アズールくんは今日も美人さんだね」
「……聞いてないですね」

クルーウェル先生に課題を提出した帰り、ぼーっと歩いていたら曲がる角を間違えてしまい、校内で迷子になってしまった。放課後ということもあり校内には人が少なく、聞くこともできない。

申し訳なく思いつつもスマホを取り出してアズールくんに連絡すると、3コール目で繋がった。そして校内で迷子になったと伝えると、またですかと呆れた声を出された。そこで待っていてください、と通話が切れ、しばらくすると肩で息をしながらアズールくんが現れた。GPSが役に立った瞬間である。そしてぼーっと歩いていたことを咎められつつ、アズールくんの顔を見つめていたら話を聞いていないことがバレた。

「全く。……オンボロ寮まで送ります」

ほら、と手を出される。その手とアズールくんの顔を交互に見ていたら、しびれを切らしたのかアズールくんに手を取られた。

「何か照れるね」

手を握り返しながらそう言い、隣にいる彼を盗み見ると耳が赤くなっていることが分かった。

「行きますよ」

照れ隠しなのか眼鏡を上げる動作をして歩を進めるアズールくん。歩くスピードはいつもより少しだけゆっくりで、オンボロ寮までの道のりが長く感じられた。



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