俺は、どうやら周りの人間からドロドロと言われているらしかった。ドロドロって、一体なんだ。昼ドラか、昼ドラなのか。主にテニス部レギュラーメンバーから言われるが、ドロドロの意味が分からない。きちんとした日本語を使ってほしい。ことごとく言うんだ。そんなことを言われた時に隣にいる名前さんは恥ずかしそうに少しはにかむ。そんな表情がたまらなく、いい。俺と彼女のことに、周りからの評価だとか見解だとかは関係なくて、正直そんな意味の分からない言葉とかは、どうでもいいことだ。…だがその、ドロドロって意味が、名前さんに溺れてるとか、そういうことなんだとしたら、俺はドロドロだ。


「…ひよ、や、だめ」


俺の下、ソファの上、挟まれて身動きの取れない名前さんは、顔を下に背けて出来る限りの抵抗を見せた。俺はそんなことを気にもしないで、彼女の顔を掬い上げるようにキスをした。ちゅっちゅって小さな音を立てて何度もキスをした。俺の両腕に挟まれた名前さんの顔の、ぎゅうと閉じられた睫毛がふるふると震えてる、可愛い。


「…なにが、駄目なんですか」

「だって、ご家族の方、いるし…」

「ここは離れてるから平気です、兄さんもいない」

「でも、まだこんな明るい」

「明るかろうが、関係ない」


名前さんが、欲しい。
瞼に、鼻先に、頬に何度も唇を落とす。いちいち反応する名前さん。明るかろうが、暗かろうが、関係ない。だって、俺はいつだって名前さんが欲しいんだ。あまり大きくないソファで、俺の下で恥ずかしそうに逃れようとする彼女は羽が取れた蝶みたいだ、なんて、少々詩的すぎるか。彼女の着ている薄手のセーターの裾から手を侵入させて、薄い腹を探った。もぞもぞ、視覚的に服の中をまさぐる俺の手はどこかやらしい。名前さんの頬や瞼や耳が、赤く染まっていく、美味しそうだ、食べたい。食欲、に非常に似ているのだと思う。名前さんを目の前にした俺の感情。率直で素直で純粋な感情だ。


「あ、や、ひよ、ふふ」

「なんです」

「くすぐったい」

「いい度胸ですね」


ブラジャーの上から胸に触れたら、ぴくんって名前さんの身体が揺れた。じゃれつくようにずっと顔や首筋に降らしていたキス。名前さんの目がだんだんと潤んできて、唇が薄く開いて、たまらなくなって舌を彼女の唇の間に差し込んだ。上顎も、歯列も、丁寧に舐めて、それから、中の奥で縮こまってる彼女のしたを軽く吸ったり、噛んだり。角度を変えも何度も、でもずっと舌だけは離さずに絡めて。喉の奥と鼻から、名前さんの抜けるような「ふ、」とか「んん、」とかこぼれ落ちる声が可愛くて全てを飲み込んでしまいたい。
だんだん、名前さんの舌もぎこちないながらも俺のに合わせて絡ませてくるから、随分と身体が熱くなる。名前さんと向き合っているだけで、ずっと熱かったけど、もっと。舌をずっと擦り合わせてれば、それだけで、かなり気持ちがいい。ただ口の粘膜同士が絡んでるだけなんだが、不思議だ。名前さんの身体も、口の中とか、だんだんと熱くなって、苦しそうな息をしだす。ブラジャーの上から、先端を引っ掻くようにねぶると、はぁっと女の人の息が名前さんの唇から生み出された。


「…ふぁ、あ、ひよ、やだ」

「なにがいやなんです本当我が儘ですね」

「…ベッドがいい」

「本当しょうがない人だ、」



こっちは余裕なんてないのに、知ってて言ってんのか。連れてって、というように俺の首に抱き着いてきて耳元で「わかし」って名前を呼ばれた。ああ、くそ、可愛い、好きだ。なるべく身体を離さないままに小さな抱き上げて、数歩の距離にあるベッドへ連れていく。そのたかだか数歩の間だって、触りたいし離れたくない。変わらない体制でふたりでベッドに乗っかっても、名前さんもおんなじ気持ちなのか、首筋にしがみついて離れなかった。


「…名前さん、離れなきゃ、触れない」


本当は俺だってもっとくっついていたいが、もう少ししたら、今よりもっと、隙間なくくっつけるさ。今度は、服を捲り上げて、彼女の白い肌を外気に曝した。




付き合って長いことになる、が、名前さんとは、あんまりこういうことに及んだ回数って、ないと思う。まあ、普通の恋人たちの回数とかはよく知らんが。多分、長く付き合った上に、中学生からだったから、初めてのタイミングが、掴めなかった。そういうことをしたいって、思ってはいたけど長かった分だけきっかけがなくて。好きが募るほど、名前さんに触りたいって気持ちが膨れ上がって。初めて繋がれた時は、名前さんもくしゃくしゃに泣いていたけど、俺だって、彼女の肩に隠れて小さく泣いた。もっと彼女が愛しくなって、彼女が俺とは違う女の人だってことを、改めて感じて、俺が守らなくちゃって、ボーッと白らんだ頭の中でずっと考えてた。欲望だとか本能とかよりも、もっと違う部分で満たされる。俺は彼女と繋がれて、一緒にいれて、心底幸せだ。





「…あ、…、んっ」

「声、隠さないで下さい」

「、んんっ、」

「顔、見せて」


まあ、こういう行為って言ってしまえば最終的に繋がることが目的であって。俺だってまだ穿いたままのズボンの下で苦しそうにしている俺の、が、早くしろって脳に訴えかけてくるんだが。
それでも、彼女の身体に触れることが好きだからぐっと堪えて我慢する。彼女の身体はどこを触ってもふわふわして柔らかい。俺の身体にはない感触だ。もうすでに彼女の服は全て取り払ってしまって、散々俺の手で弄られて触られた身体は蕩けそうに熱かった。触れば触るほど、名前さんの身体は薄く赤く色付くし、どんどん敏感になって気持ちよさそうに反応してくれるから、いっぱい触りたくなってしまう。
胸の先端は、俺の唾液でテラテラと濡れていて、非常にやらしい。ちゅって吸ったり舌先でねぶったりして、片方は指でいじったりして。膨らみの部分も沢山赤く鬱血が出来ている。白い肌が俺のつけた赤い痕で沢山埋まると、ひどく心地好い。全身にキスをしてもしたりない、触りたりない、ずっと触ってたい。彼女の肌はこんなにも、気持ちがいい。

下も、凄い濡れている。それが嬉しい。俺の指や唇で感じてくれたんだって。唇を彼女の唇に移動させて、また息を飲み込むように重ね合わせながら、食指を入口に添わせた。口の中で、彼女の上げた声が生まれそこなって吐息だけが漏れた。くちゅって、水音がやけに響く。親指で突起を掠めながら浅い部分だけを指で刺激していたら、彼女は目に涙を溢れさせた。


「っひよ、」


一気に差し込んだら、ピクンピクンて俺の下で彼女が身体を震わせる。


「もう、いっちゃったんですか」

分かってるのにわざわざ聞くのは卑怯か。彼女は返事もうまく出来ずに俺にしがみついてくる。中はぎゅうぎゅうに絡みついてきてあったかい。お腹側のザラザラした部分を擽るように刺激したら、合わせて彼女は唇から小さな声を生み出した。彼女の、いつも抑えたような小さな喘ぎ声が好きだ。
徐々に本数を増やしながら、ゆっくりと抜き差しを繰り返してやると、中の壁が奥に招くように動く。ああ、奥好きでしたもんね。天井部分をぐりぐりされるのが好きですもんね。素直にそうしてやれば、思わず彼女の口からは「あっ」て大きな声が出た。あああああ、かわいいかわいいかわいい。もっと聞きたくなるからそこばかりをいじった。


「ふ、…あ、わか、」

「…なんです」

「やだ、もう、だめっ、…ん、ひゃ」

「また、駄目、なんですか」

「違くて、やだ、…ふぁ」

「なにが、ちゃんと言ってください」

「やぁ、…いじわる」

「どんな俺でも好きって言ったのは、名前さんですよ」

「…好き、わか、好き、好き」


ぎゅうっと俺にしがみつく名前さん。ついにぽろぽろと泣き出してしまった。加虐心が煽られてるって気づかずに。
ずっと名前さんの身体に触り続けるのは、名前さんの反応が好きなのもあるし、俺が気持ちいいってのもあるし、彼女に気持ちよくなってもらいたいってのもあるが。一番はこれが理由かもしれない。彼女の、おねだり。


「わか、わかしが、…欲しい」

胸にじわじわと込み上げる、この感覚。言葉じゃ現せない。彼女が俺を求める、欲しがる、俺だけを。口許が緩むのを感じた。「きて…」彼女が俺を求める瞬間。穿いてたズボンも下着も脱ぎ捨ててベッドの下に放った。避妊具を手早く装着すると、彼女の足を広げて間に入る。両方の手を、彼女の手に絡めて繋いだ。
名前さんはふにゃりと笑う。熱を帯びた目。うっすらと汗ばんだ桃色の頬、それだけで、下腹部はもっと熱くなる。やっぱりまだいじわるがしたきなって、蕩けそうな入口に俺のを宛てがって、擦りつけた。突起もついでに刺激してやれば、彼女の腰がもどかしそうによじられた。はぁって唇から漏れる吐息が愛しくて、浅く先端だけ挿入して緩く動かしてみたらまた彼女は泣き出した。


「わか、や、…はやく、」

「っ、いやらしい」

「…っお、奥まで、わかで、いっぱいに」


して、なんて言い切る前に、すいません、俺が限界がきました。だって、やらしすぎる、かわいすぎる!ぐって腰だけに体重をかけて一気に、中に押し込んだ。熱くて、とろとろで、きつくて。俺のを奥へ奥へと導くようにきゅうきゅううごめく。わかってますってば、奥、大好きですもんね、なんて。


「わ、わか、あぁ、っだめ、そこ…っ、ぁっ」

「駄目?だから、いいって、言え、よ」


好きだもん、な?奥の奥まで差し込んで、ぐりぐり、激しく抜き差ししないで押し付けるように動かすと堪えられなくなった名前さんが手を離し、俺の背中にぎゅうってしがみついてきた。ぴったりとくっついて、俺の体重が名前さんにかかって、もっと深く繋がった。


「ひぁ、…っおくに、」

「きもち、いいん、ですよ、ね」

「ん、ふぁ、っ、…きもち、いい、」


泣きながらいうもんだから、正直、俺ももう限界だ。彼女の顔に何度もキスをしながら、少し自身を落ち着かせる、はー、もう、落ち着け、俺。まだ名前さんの中にいたいし、彼女をきもちよくしたいし、限界なんて御免だ。少し落ち着いてきたころに、少しずつ、名前さんの弱い奥を刺激しながらピストン運動を開始する。緩く、奥に、奥に。名前さんが俺にくっついて離れないから、彼女の柔らかい肌が俺に触れて擦れて、それすらもきもちいい。彼女の顔の横に腕をついてどんどん振れ幅を大きくさせる。目を、かたく閉じて快感に呑まれる彼女は、最高に綺麗だ。俺は目を閉じることすら出来ない、だって、名前さんを見ていたい。感覚全てで彼女を感じたい。擦れ合う肌、だんだんとペースを上げながら彼女の中を掻き乱す。中の液体がぐちゅぐちゅと擦れあって溢れでた。「わ、か、っぁ、わかし、」ずっと譫言のように俺の名前を呼び続ける。俺のことしか、今名前さんは考えていない。与える感覚も全て俺だけだ、俺だけが、名前さんの、全て。

「っ、名前、さん、…」

俺も余裕なんてない。名前さんの中に入ってるときは、きもちよすぎて嬉しすぎてまともな思考なんて持ち合わせていられない。ただ、がむしゃらに腰を振って、彼女のことだけ考える。
初めて繋がったときから思っていた。俺達はあまりにもぴったりと繋がるもんだから、お互いに誂えて作られたみたいだ。名前さんの奥がピクピクと小刻みに動いて、あ、そろそろかって思う。同時に、俺のも奥から込み上げそうになった。


「…わかっ、もう、はぁ」

「わかって、るっ、俺も」

「う、ん、…ぁ、わ、わか」

「なん、ですっ、」

「ぎゅ、って、…ん、あ、して、ぎゅって、わか、わ、か」


あなたが望むなら、なんだって。俺も彼女をぎゅうって抱きしめながら、ぎりぎりまで引き抜いて、そして奥まで差し込んで、ついでにぐぅって奥を突き上げたら、彼女の背中が弓なりにしなって中がぎゅうぎゅうにしまって俺の全てを絞りとるみたいに動いて達した。俺もこぼれそうになった声を必死で飲み込みながらごまかすように名前さんにキスをしてゴムの中に沢山の液体を吐き出して、彼女の上へと倒れこんだ。





「はぁ、わか、し」


まだ荒い息のまま、彼女が俺の頭を抱えて撫でた。柔らかく痙攣をくりかえす彼女の中は甘くてずっと留まっていたいが、きちんと避妊をしなければいけないので、必死に理性に訴えかけながら彼女から俺のを引き抜いた。抜くときに、名前さんが「んん…はぁ」なんて言うのは聞かなかったことにしろ俺の耳。


ゴムを外して縛って捨てて、簡単な処理だけを手早く済ませたら、名前さんの横に寝転んだ。それを待ってましたと言わんばかりに抱き着いてきた彼女は、俺にちゅと小さな音を立てながら沢山キスしてきた。終わった後の名前さんは、妙に甘えたがりになる。布団の中で足を絡めて、触れるだけのキスを繰り返す。可愛い、俺も自分で大概素直ではないと思うが、名前さんだって素直じゃない。彼女から抱き着いてくるとか、キスしてくるとか、滅多にない。だからこうしてじゃれてくるのは、可愛い、本当。

俺の髪を撫でたりしながら、にこにこと幸せそうに笑う彼女に、俺も同じ気持ちを抱く。だけど、同時に、酷く寂しくて不安な気持ちに駆られるのは、俺だけだろうか。あんなに、深く繋がったって簡単に離れてしまう。あのときは、名前さんは俺しか見てなくて、俺のことしか考えていなくて、文字通りのふたりだけの世界だった。

最近、名前さんが時々寂しそうな顔をしているような気がしてた。俺も、彼女の全てが俺でないことに、どうしようもない苛立ちを感じてしまうことも。離れなければいいのに。そんなことを考えて、彼女の身体を強く抱きしめた。




繋がり剥がれる個体


満たされるのは、いつだって一瞬だ。

20100330
幸せだって感じた分だけ寂しくなる。繋がれるから離れたときに寂しくなる。もともとひとつの個体なのにねっていう。
えろは疲れる^^が、楽しい!
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