頭がおかしくなりそうだ。


脳みその奥からじわじわ熱が生まれてるけどどこにも行き場がなくて篭って血が沸騰してそれが体中に駆け巡った。汗がじんわりと滲むが、そんなんじゃこの熱は冷めやしない。俺の躯も熱いけど彼女の躯も熱くてどっちがどっちの躯だか検討がつかなくなってた。これは大袈裟な表現じゃない、決して。
部屋は真っ暗だったけれども感覚が研ぎ澄まされているのか俺はとても良く見ることができた。でも視界はぐらぐら揺れてる。俺に足を抱えられて揺さぶられてる彼女の白い肌が見える。暗闇の中でそれは薄く発光してるみたいだ。ぎゅうと目をつむって目の端に涙を溜めてる彼女の顔だって細い肩だってしっかりと見ることが出来た。ふたりの息遣いが浮かび上がった。ギッギッとベッドのスプリングが苦しそうに悲鳴を上げていた。彼女の恥ずかしがって控えめに抑えられた声に俺はますます欲情してもっと強く彼女を揺さぶった。


彼女と付き合って3ヶ月になるけれどもそれ以上に一方通行であった期間がものすごく長くて。好きで好きで仕方なくて、申し訳なくて後ろめたいことだけれども俺は何度も彼女を思ってひとり自分を慰めた夜があって。どんなに肌は白いだろうかとかどれだけ柔らかいだろうとかどんなに温かいだろうとかどんな声をしてどんな顔をして、どんな、どんな、どんな。そんな妄想ばかりで付き合ってからも今までこうして実際に触れたことはなくて。やっぱりいつも自分を慰めて彼女を汚してしまったみたいで後ろめたくて次に彼女に会う時はちゃんと目をみれなかったりしてた。
目をみないで視線を逸らした先にある彼女の躯を見てしまって妄想がぶり返して頭の中とその他どうしようもないところが大変なことになりそうだったりとか、そんな過去の話はもうこの際どうでもいいことであって。


念願叶ってこうして触れた肌は妄想なんか吹っ飛ばしてあんな程度の妄想しか出来ない乏しい想像力ですいませんでしたってくらい、柔らかくて白くて。おまけに夏場にドキドキして気になって仕方なかったおっぱいだってそれはもう、素敵で。恥ずかしがるその姿も泣きそうな目も俺の背中にまわされた手も抑えられきれず唇から漏れる声も俺が泣きそうになってしまうくらいどれもどれもとても愛しい。くそ、なんでコイツはこんなにも可愛いんだ犯罪レベルじゃないかこれは。


「あ、…っひよし、くん」


あんまりにも可愛い声で俺を呼ぶものだから頭がぶっとびそうになって、ああもうそろそろやばいぜ、というかやばいを越してしまいそうだ。今すぐいっちゃいそうなくらいなんだが、まだそれは早い気がして、出したいけどまだ出したくなくてまた彼女を強く揺さぶった。彼女が声を上げた。


もうねじがはずれたのかなんだかしらないけどなんか彼女に気の利いたことを言いたいけど浮かんでくる言葉は気持ちいいぜとか可愛いぜとか素敵なおっぱいだぜとかすごくきついぜだとかそんな酷くて単純なものだけであまりにもお粗末だ。なのでなにも言わなかった。視界にある俺の中で揺れるコイツに何か言ってやりたいのに、上手く言えない。もどかしい。


男があんあん喘ぐのはどうかと思うというか恥ずかしいという変な意地だけはこんな状態でもまだあって、必死で我慢してたら喉の奥で息の詰まった音がした。彼女は最早声を抑えることを忘れてしまったみたいで俺のことを何度もよんだ、日吉くん日吉くん日吉くん、…わかしくん。


あまりにも可愛いすぎて俺は思わず唇で彼女の唇を塞いでその瞬間彼女はびくりと震えてなかがぎゅうぎゅうになったので、俺の頭の中身はどこかへふっとびましたとさ。

それでもどうしてもその単純な言葉だけはどこかへ消えようもなくひとつ残ってたので、大きく息を吐いてそのときに思わず漏れた恥ずかしいような「うっ」ていう呻き声のあとにそれを口にする。


「、すきだ」



それは単純なことなのです



彼女も泣きながらすきって小さくつぶやくから、俺は幸せすぎてどうにかなってる。

20090416
20100613 加筆、修正
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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