「うそつき、聞いてない!」
「何が、」
「私、におうくんがそんな人だとは知らなかったわ!」
「男はみんな、こんなもんじゃ」
「違う、違うの、私の知ってる、におうくんは、におうくんは、」
「におうくんは?」
「テニスが好きで、飄々としてて、みんなから好かれてて、それでいて、優しくて、「優しくて、ヘタレで、お前になんも、出来んような男?」
「ち、ちがくて」
「好きなやつ目の前にして、いつまでも好い人でいられるわけないじゃろ」
「に、におうくん、」
「もう黙りんしゃい」
そんなこと言って、抱きしめる手は凄く優しいんです。それが余計に、ぎゅうと胸を苦しくさせるんです。
白くてそしてあまりにも小食の上の偏食で、華奢だと思っていた身体は、簡単に私を捕まえて、すっぽりと覆います。におうくんの匂いがくらくらさせるんです。
さあ、私はいよいよ、気が付いてしまったのです。
見えない尻尾。
(すぐめのまえには、しっぽの生えた王子様)
(見えなかった、気付かなかった、彼のしっぽ)