久々の休日。普段はこんな日も暗躍のために消費してしまうんだけど、今日は特別な日だから、彼女のために時間を使うと決めている。
駅前の広場に到着して数分、いつもよりとびきり可愛くおしゃれをした彼女が、もうすぐここに来るのがミえているから、迅は少しだけそわりとした気持ちを落ち着けるために大きく息を吐いた。

「悠一〜!」
「お、」

背後から自分を呼ぶ声は軽やかで、思ったよりもふわふわとしていて、その声色から、彼女も自分と同じようにどきどきそわそわしていたのかもと予測して、迅はふふ、と笑みをこぼしながら振り返る。
そして、視界に入ってきた彼女の姿を認識して、迅の心臓はぎゅんと不規則に跳ねた。

「ごめんね、お待たせ!」
「ん、大丈夫。そんなに待ってないよ」

とたとたと走って来た彼女は、ひらりと手を振って返した迅の言葉を聞いてほっと息を吐く。その弧を描く唇が艶やかで、ふわりとゆれる髪からは甘い香りがして、今日下ろしたばかりの可愛らしいワンピースを身に纏う彼女は"見"て知っていたはずなのに、なかなか大人しくなってくれない鼓動に、迅は内心苦笑した。

「ふふ、このワンピースね、今日のために買ったの」
「…うん、すごく似合ってるよ」

ひらりと裾を広げる彼女にそう言えば、途端に嬉しそうに表情をゆるめるから、迅は咄嗟に口元に手を当てて顔の下半分を隠す。あぁもう…こんなに胸がどきどきとうるさいのは、きっとこのデートが久しぶりだから。なんて自分に言い訳をして顔をあげると、迅の顔をぽかんと見上げていた彼女は、そっと口元に手を当てて呟いた。

「悠一でも、照れることってあるんだね…」
「……そりゃあ、自分の彼女が可愛すぎたら、照れることもあるだろうね、」

ちょっぴり自棄になって言い返すと、ややあって彼女も迅につられるように頬を染めたから、迅はくすりと笑って彼女の頬をつついた。










お誕生日おめでとう!




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