君と23時
「ぐがー」
「ぐがー」
「もう、シドもバレットも酔い潰れちゃって」
「むにゃむにゃ、マテリアー」
「ふふ、ユフィも寝ちゃってるね。ベタな寝言、言いながら」
「あっちの二人は……あ」
「え?……あ」
「「そっとしておきましょう……」」
「そういえば私、ヴィンセントのアドレスもらってなかった!」
「そうだな、近くに居すぎて、もらった気でいた」
「危ない危ない。はい、これ、私のアドレス」
「ほう……興味深いな、一体どんな意味だ?」
「ひ、秘密!」
「それは残念だ」
「……ヴィンセントのアドレスだって意味深だよ、教えてよ」
「秘密だ」
「ケチ!」
「ケチはお互い様だろう?」
「もう! ねえねえ、私にメール送って?」
「目の前にいるのにか?」
「うん! お願い、送って!」
「メールはあまり好きではないのだが」
「一通でいいからさ、ね? 私だけなんだもん、ヴィンセントからメールもらってないの」
「一通だけだぞ」
────────────────────
To : イリス
From : ヴィンセント
Sub :
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
イリス、
────────────────────
「ヴィンセント、これ途中じゃ──」
「……え、」
「……甘いな」
「……ええっ! 不意打ちでキスするのずるい!」
「お前がメールを送れと言った」
「いや、そうだけど! 言ったけど! き、キスするとは思わないじゃん! しかもメールも途中で送信されてたよ」
「……何と送るべきか悩んだんだ」
「……うん?」
「イリスが好きだ、イリスは今日も可愛いな、イリスいつもありがとう」
「なんだか、いつものヴィンセントらしくない」
「……というのは冗談だが、」
「冗談……! ドキドキしてたのに!」
「しかし、本当に悩んだんだ。文字にするには言いたいことが多すぎる」
「うん」
「だから、イリス、とだけ送った」
「……ヴィンセントの言うことは難しい」
「……」
「でも、話を聞いたら、このメールはなんだか、すごく嬉しいな」
「素直なのか、単純なのか」
「素直なの!」
「イリス、」
「なあに?」
「帰るか?」
「うん!」
メールもいいけど、やっぱりヴィンセントの声が好きだと再確認できた一日でもあり、全員にメールを送ることができた一日でもありました。よかったです、めでたしめでたし!(?)
[ 195/340 ]
[prev] [next]
list bkm