あなたは、なにか、恐怖を抱いている。
それは、ただの記憶《メモリー》の再生だったのか。
答えはまだ、ない。
彼女は言った。
ここはまるで遥か遠くにみえる蜃気楼のようだと。
手の届かない、夢のような。
そして自分は、己のものではない《誰かの楽園》に足を間違えて踏み入れた影なのだと。
この蜃気楼が掻き消えてしまう瞬間に、自分はどこへいくのか。
彼女も、誰も、知るよしもない。
***
【 開発室レポートNo.XXX ○月×日 】
実験:換装体と通常の人体のギャップにおける観察実験、及び被験者《八嶋春》のトリオン体における能力の行使実験
被験者の協力により過去データの吸い上げを行い、現在21歳である彼女のトリオン体を高校時代(能力の最盛期とされている)にした場合における、能力の変化をみる。
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