3月のライオン | ナノ
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彼と彼女の遠大にして壮大な挑戦


「零くんかっこいい!惚れた!島田さんいなかったら私は今すぐ零くんに告白してたね!」

結は握りこぶしで力説した。

「懐かしいなぁ、私も初めてのプロポーズがそれくらいだったよ」
「え」

遠い目をした結は過ぎ去りし日に思いを馳せる。零と同じく、まだ学生服を着ていたあの頃を。

「修学旅行中にね、班行動すっぽかして島田さんに会いにいったの!で、プロポーズしたの。あれからもう何年だろ……零くんもこっからが大変だよ?ゴールインまでは果てしなく長い道のりがあるからね」
「……えーと、はぁ」

経験者は饒舌に語る。

「大抵どん引きから始まるからね。うわっ、なにこいつ何言ってんの?正気かな?みたいなね、扱いを受けるわけだよ。失礼だよねぇ本気なのに!」

まぁ今となっては結の本気を本気だと思っていないのは島田くらいのものである。年齢の差の壁は高く厚い。逆プロポーズ以来、ずっと結はその壁を叩き続けているのだ。いつか、島田の鉄壁が崩れる日をひたすらに信じて。

「お互い相手が陥落してくれるよう頑張ろうね零くん!最終的には押し倒して既成事実だ!」
「いや、結さんはともかく僕がそれやると犯罪ですからね?!」

ネバーギブアーップと拳を突き上げて結は高らかに叫んだ。島田が口元をひきつらせてそれを見ている。恐らく押し倒して云々のくだりを聞いていたのだろう。現在進行形で危機感を募らせている先輩棋士に心の中で合掌する。
結にのしかかられて既成事実を作られてしまう、というのがあまりにも有り得そうで笑えない。若さって怖い、と島田は後に零に語った。まだまだ若い零もぶんぶんと首を縦に振ってその言葉に頷いた。