3月のライオン | ナノ
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愛とはなにか? (元拍手お礼2015/5/16~08/15)


一般教養の講義の中で提出された課題に行き詰まり、私は将棋会館の前の定位置でノートをかかえうなっていた。

愛とは何か?
自分なりの言葉で表しなさい。

講義の内容とはほとんど関係のない、教授の面白半分の課題だ。
《愛》なんてくさい単語に様々な反応を返す学生たちをにやにやたちの悪い笑みを浮かべてみていたから多分間違いない。
単位にも影響しない、とは言われたものの、いざ適当にすませてしまおうとするのもうまくいかない。

愛とは何か?

自問する。
浮かんだのは大好きな人の顔だった。

「何やってんの?」



棋士の中でも親しいスミスさんが背をわずかにかがめて、覗き込んでくる。

「愛って何でしょう?」
「は?」
「愛、とは何か考えてるんです」
「…大学の課題かなんか?」

「そーです。スミスさんにとっての愛って何ですか?」

聞けば露骨に嫌そうな顔をされた。



「それを独身男に聞くのはどーよ。それよかさー、もっと聞くべき人いるでしょ」
「・・・?」

きょとんと首をかしげた。
考えがまとまらないときは、島田さんの顔を見てやる気を出すに限ると思ってここへ来たのだが、ついスミスさんに聞いてしまった。アンケートでもとりにきたのと勘違いされてしまったかもしれない。

スミスさんが私の手をとって歩き出す。コンパスの長い足にひきずられて、向かった先なんてもうわかりきっていた。



「や、ヤダヤダ!スミスさんどこいこうってんですか?!わかってます?私、部外者ですから!」

「往生際悪いなぁー。せっかくだから一番聞きたい人に聞いとけばいいじゃん」

「いやーっ、ムリ!むりむりむり!きけない!聞きたくない!島田さんのこれまでの経験に基づく愛とは何か講座なんて聞いてられません!すごいもやっとする!めちゃ嫉妬する!」

「……君の愛ってさぁ、」

肩越しに振り返るスミスさんの生暖かい視線がなんだかむしょうに腹だたしい。

(どうせ!わたしの愛なんて重いですよ!粘着質のストーカー気質ですよ!)